固定価格買取制度が終了?私の太陽光発電所は大丈夫?FITの今後を解説

太陽光発電を含む再生可能エネルギーの固定価格買取制度について、「FIT制度終了」や「買い取り終了」というショッキングな見出しのニュースが報道されました。

発電所を運営中の方、これから導入される方にとって衝撃的ですよね。
ソラサポにもパニック気味の電話がたくさんかかってきました。

でも、落ち着いてください。

今回のニュースの内容は「2020年度末以降の制度をどうするか」という話です。
現在運転中の設備や、すでに売電単価を確保している認定とは無関係です。

報道の見出しには、注目を集めやすい言葉が使われがちです。

FIT制度が終了して、電気を買い取ってもらえなくなるような表現の見出しがたくさん出てきます。
しかし、そんなことは決まっていません。元の資料を読んでみると全く違うことがよくわかります。

もともと予定されていた、制度の見直しについて議論が始まり、現状を踏まえた提案が出されている、というのが正しい理解です。

この記事では次の5点について説明します。

(1)ニュースで誤解されがちな4つのポイント
(2)固定価格買取制度(FIT)終了のニュースは、誰に関係あることなのか
(3)運転開始済みの発電所や、単価を確保している認定に影響はあるのか
(4)固定買取価格制度終了の検討ではなくて、制度の見直し議論が始まったというのが正しい理解
(5)FITの次に採用されそうな「FIP制度」の紹介

この記事を最後まで読めば、根拠のない不安がなくなるでしょう。

ニュースを見て誤解したまま太陽光発電の導入検討をやめてしまった。
どうせ固定価格制度が終わるなら…とメンテナンスをやめたら売電停止となってしまった。

など、誤解で不利益を被ることのないようご注意ください。

FIP制度については次の記事をご覧ください。

新しい制度の候補としてあげられている「FIP制度」について解説をまとめました。
次にどんな制度が来るのか気になる方はご一読ください。

FIP制度とは|太陽光発電の固定価格買取制度終了後の有力候補を解説


1. ニュースで誤解されがちな4つのポイント

まずは不安の元となる誤解を解きたいと思います。報道で誤解されがちな4点の正しい理解をご紹介します。

FIT終了にありがちな4つの誤解

1-1. 固定価格買取制度(FIT)の終了が決定した?・・・いいえ、終了決定していません。

今回のニュースの元は、再生可能エネルギーの買取制度の見直し議論です。
まだ何も決定していません。

確かに、固定価格買取制度の終了も意見の一つとしてはありますが、新しい制度に移りましょうという意見です。

 

1-2. 運転中の発電所の買取が途中で終わる?・・・いいえ、途中で終わりません。

再生可能エネルギーの買取制度の見直しは、2020年度末までに予定されています。

議論の内容は「今後新たに設置する設備を管理する制度をどうしよう?」というものです。
既存の発電所をどうするかという議論ではありません。
つまり、「すでに運転中の発電所の売電期間を取り消しましょう」という議論ではないのです。

運転開始済みの発電所についてはこれまで通り、売電開始から20年(住宅用は10年)が売電期間です。

 

1-3. 運転中の発電所の売電単価が取り消される?・・・いいえ、取り消されません。

売電期間と同様に、売電単価も維持されます。

今回ニュースになっているのは、あくまでも新たに設置する設備を管理する制度の話です。
既存の発電所をどうするかという議論ではありません。

 

1-4. 未稼働の発電所は電気を買い取ってもらえない?・・・いいえ、条件を満たせば大丈夫

せっかく確保した売電価格が無駄になる、ということもありません。

一度確保した事業計画認定は、制度の変更があっても維持されます。
実際に、2017年度に実施された改正では移行手続きが必要になりましたがちゃんと権利は維持されました。

ルールを守らないと、売電価格の変更、売電期間の短縮の対象になる
運転開始期限を守らなかったり中身を変更するなど、現行の制度で売電価格の変更になることを行なった場合は、当然売電価格の変更や売電期間の短縮の対象になります。

 


2. 固定価格買取制度の見直しの影響を受ける人

1章で、ニュースの嘘を見破れたでしょうか?
次に気になるのは、「あなたに影響があるのか?」という点ではありませんか?

この章では、制度見直しの影響がある範囲を明確にします。

2-1. 影響を受けるのは、2020年度末の法改正後に太陽光発電の設置手続きを始める人

今回議論されているのは、2020年度末までに予定されている法改正の際に、再生可能エネルギーの導入を推進する制度をどのようにしていくかです。

つまり影響を受けるのは、法律の改正後に発電設備の設置手続きを始める人です。

すでに運転開始している発電所や、売電価格取得済みの未稼働案件の「売電期間」と「売電価格」に影響はありません。

2-2. 運転開始済みの発電所や認定取得済みの未稼働案件は、何か制約や義務がつけられる可能性がある

過去の法改正や、制度の運用変更の際にも運転開始済みや未稼働案件の「売電期間」及び「売電価格」については基本的に維持されてきました。

しかし、様々な制約や義務が付与されています。

2020年度末予定の改正でも、何らかの義務や制限がつけられる可能性はあります。
いきなり売電期間が終了する、売電価格が変わってしまうという心配は不要ですが、改正が決まったらきちんと内容を把握して対応しましょう。

過去の法改正や運用変更で義務や制限がつけられた例

2017年度の法改正では、新制度への移行手続き、標識の設置、フェンスの設置、メンテナンスの実施が義務化されました。

9分でわかる改正FIT法|太陽光の認定取消を回避する手続きと義務【随時更新】

2017年8月には増設が規制されました。

増設と過積載の新ルール|5分でわかる省令改正の規制・変更点まとめ

2018年度末には、運転開始期限がなかった未稼働案件に運転開始期限がつけられました。

未稼働太陽光対応のパブリックコメント結果|売電単価減額の回避方法

 

2-3. 運転開始済みの発電所や認定取得済みの未稼働案件の、売電期間と売電価格に影響がある3つのケース

運転開始済みの発電所や、認定取得済みの未稼働案件の売電期間と売電価格に影響があるのは3つの場合です。

・設置者の義務に違反した時
・売電価格に影響する設備の変更をした時
・運転開始期限を過ぎた時

いずれも注意して行動すれば避けられるものです。

2-3-1. 設置者の義務|標識の設置、フェンスの設置、メンテナンスの実施、年報の提出

設置者の義務は、発電設備の設置者(オーナー)が必ずやらなければならないことです。
やらずに放置してしまうと、指導や売電取り消しの対象になってしまいます。

標識の設置

原則として、20kW以上の野立て太陽光発電全てに義務付けられています。

太陽光発電の標識(看板)設置の完全ガイド|ルール・書き方・選び方

 

フェンスの設置

一部の営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を除く、野立て太陽光発電に義務付けられています。

太陽光発電のフェンス・柵設置義務|改正FIT法に必要な5つの基準

 

メンテナンスの実施

産業用・住宅用問わず、全ての太陽光発電が4年に1回以上のメンテナンスを義務付けられています。
実施後は記録を保存する必要があります。

家庭用太陽光発電に必要なメンテナンス|義務化の点検項目・費用・回数

 

年報の提出

全ての産業用太陽光発電に、毎年の提出が義務付けられています。
住宅用でも、要請があった年は提出する義務があります。

太陽光の定期報告|設置・運転・各費用年報の義務と書き方マニュアル

 

設置者の義務は必ず果たしましょう

標識やフェンスの設置は、固定価格買取制度開始当初義務ではありませんでした。
制度の改正によって、運転開始済みの発電所にも後から付け足された義務です。

想定外の出費で納得できないという声も多く聞きます。

とはいえ、いずれの義務も、不要なトラブルを防ぎ、安全かつ安定した発電所の運営を維持するためという側面もあります。
納得できないから、といって義務を果たさず、売電取り消しとなってしまっては本末転倒です。

太陽光発電を設置した業者や、メンテナンス業者と相談し、必ず対応しましょう。

ソラサポでは掲示用の標識を販売しております。
2019年4月の改定に対応した最新版です。未設置の方はこの機会にご検討ください。

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2-3-2. 売電価格に影響する設備の変更

太陽光発電は一度売電価格を確保した後に以下のことを変更すると、ごく一部の場合を除き売電価格が変更になります。

・発電設備の出力の変更
・太陽光パネルの合計出力の変更
・接続契約締結日の変更
・蓄電池の増設、新設
・接続契約締結日の変更

認定を取得した日や電力会社との接続契約日、発電所の規模などで少しずつ条件が異なるため、資源エネルギー庁が公開している整理表できちんと条件を確認しましょう。

資源エネルギー庁HP 「なっとく!再生可能エネルギー」にて、変更内容ごとの手続きの整理表<変更内容ごとの変更手続の整理表>と調達価格(売電価格)に影響のある変更の整理表<調達価格が変更される事業計画の変更整理表>が公表されています。

何か変更したいときは必ず最新の整理表で確認しましょう。

2-3-3. 運転開始期限を過ぎた場合の扱い

運転開始期限を過ぎた場合の扱いは、産業用太陽光発電と住宅用太陽光発電で異なります。

産業用太陽光発電(10kW以上)は売電期間の短縮

産業用太陽光発電の場合、運転開始期限を過ぎると1ヶ月単位で売電期間が短縮されます。運転開始期限を超過した場合の扱い(資源エネルギー庁 公開資料 「未稼働案件への対応について(運転開始期限を超過した場合の取扱い)」2ページ目

どのような事情があっても考慮されません。期限までに運転開始できるように進めましょう。

住宅用太陽光発電(10kW未満)認定の取り消し=売電価格の取り直し

住宅用太陽光発電の場合、運転開始期限を過ぎると事業計画認定を取り消されてしまいます。
同時に確保していた売電価格も取り消しです。

再度認定を取得する必要がありますし、売電価格も認定を再度取得した年度の売電価格になります。

 


3. 固定価格買取制度見直しの概要

今回ニュースで取り上げられたのは、2020年度末までに予定されている法律改正のための議論のごく一部です。
インパクトの強い部分が取り上げられていますが、実際の議論はまだ始まったばかりで何も決定はしていません。

この章では、なぜ改正するのか、現在の議論はどのような段階なのかといった現在の状況と議論の内容について、
公開された資料をもとに説明します。

3-1. 固定価格買取制度は3年ごとに制度の内容を見直すことが決められている

再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、再生可能エネルギーの普及を促すために導入された一時的な制度です。
導入を促すために、再生可能エネルギーの設置は非常に優遇されています。
そのために特別措置法が定められました。

しかし、いつまでも優遇するわけにはいきません。普及が進めば制度を見直す必要があります。
優遇しなくても成り立つ程度にまで成長したなら、制度による保護をなくす必要もあります。
そのため、法律も最低3年に1回は見直しすることが定められました。

2政府は、エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保を図る観点から、前項の規定により必要な措置を講じた後、エネルギー基本計画が変更されるごと又は少なくとも三年ごとに、当該変更又は再生可能エネルギー電気の供給の量の状況及びその見通し、電気の供給に係る料金の額及びその見通し並びにその家計に与える影響、第三十六条の賦課金の負担がその事業を行うに当たり電気を大量に使用する者その他の電気の使用者の経済活動等に与える影響、内外の社会経済情勢の変化等を踏まえ、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

○電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 より 附則 第2条 2

3政府は、この法律の施行後平成三十三年三月三十一日までの間に、この法律の施行の状況等を勘案し、
この法律の抜本的な見直しを行うものとする。

○電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 より 附則 第2条 3

前回の改正は2017年度に実施されました。
次の改正が2020年度末(2021年3月31日)までに実施することになったのです。

3-2. 2019年6月時点では何も決まっていない

法律で定められた2020年末までの見直しに向けて、現在「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」でどのような方向性で見直すのか議論がされている段階です。

4月22日の第13回小委員会から制度の見直しについての議論が開始され、5月30日に業界団体からのヒアリングが、6月10日に海外の制度について有識者からのヒアリングが実施されました。

今回ニュースの元となったのは、6月10日に開催された第15回会議の「資料1 ヒアリング参考資料」でしょう。

まだ意見を聞いている段階であって、何も決定していません。
今後もヒアリングと議論が重ねられて、法律で定められた期限までに新しい制度が決定されます。

3-3. 制度の大幅な変更が議論されている

これまでの小委員会で、FIT制度からFIP制度という新しい制度への移行や自家消費の推進、再生可能エネルギーの種類に応じた支援のあり方など、様々な側面からの意見が出されています。

第13回小委員会での主な意見

第14回小委員会での主な意見(第15回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 資料1 ヒアリング参考資料より)

インバランス特例の廃止や、収支の予見可能性を担保した上での買取義務廃止の提案といった厳しい意見もあります。
しかし、買取制度自体の廃止を提案する意見はありません。
発電方法に合わせた支援方法を推進する意見もあります。

全ての意見がそのまま採用されるわけではありませんが、2017年度に実施された改正と同じく、あるいはそれ以上に大幅は制度の変更があるでしょう。

3-4. 次に採用されそうなFIP制度

第15回小委員会は海外の制度についての有識者ヒアリングが行われたので、世界各国の再生可能エネルギーに関する制度が紹介されています。

各国の買取制度(第15回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 資料1 ヒアリング参考資料より)

この中でも特に注目したいのがFIP制度です。
ドイツやデンマークで採用されている制度で、次のように説明されています。

再生可能エネルギー発電事業者が卸電力市場または相対取引で直接売電し、売電価格に加えて、市場プレミアム(あらかじめ定められた基準価格(FIT制度でいう買取価格)と平均市場価格の差額)が補填される制度

(第15回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 資料1 ヒアリング参考資料より)

電力市場や直接取引で電気を売電することになりますが、最低限の価格は保証してくれるという制度です。
委員会でもFIT制度からFIP制度への移行を提案する意見が複数あり、新しい制度の有力候補と言えます。

2020年度以降に太陽光発電の導入をする場合は、FIP制度について調べる必要がありそうです。

FIP制度について詳しく知りたい方は次の記事をご覧ください。

FIP制度はドイツやスペインなどで導入された制度です。
制度の概要や注目点をまとめましたので、どんな制度か気になる方は次の記事をご覧ください。

FIP制度とは|太陽光発電の固定価格買取制度終了後の有力候補を解説

 


まとめ

今回騒がれているのは、あくまで制度の見直しです。
現在運転中の発電所や、確保している権利をどうこうという話ではありません。

また、2019年6月時点では議論が始まったばかりで、何も決まってはいません。
無意味に不安を感じる必要はありません。

ありがちな誤解4点

とはいえ、現段階での議論の内容を見ると、再生可能エネルギーの普及を受けて新しい制度に移行する可能性があります。
2017年度の改正のように新たな手続きや義務が発生する可能性がある、ということです。

改正の中身が決定したら、売電期間と売電価格を維持するために対応が必要かどうかを確認しましょう。

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