中古太陽光発電をお探しのあなたは、利回りが良い物件をお探しではありませんか。
しかし、太陽光発電と土地購入の2つの専門知識がないと思わぬ落とし穴があるのでは…と心配になりますよね。
実は、ご心配のとおり、中古太陽光発電所ならではのリスクやデメリットは多数あります。
その反面、土地を探す必要もなく、工事の完工リスクもなく、売電収入の実績もあるという、大きなメリットがあります。
つまり、知識不足によるリスクやデメリットを避けられれば理想的な投資先の選択肢がひとつ増えることになりますよね。
そこで、今回の記事では私たちソラサポの2000件以上の設計・設置・申請・売買の経験をもとに、中古の土地付き太陽光発電物件を購入する際に必須の5つの基本知識と48のチェックポイントを解説します。
(1)中古太陽光発電所とは何か
(2)中古太陽光発電所のメリット
(3)中古太陽光発電所のデメリット
(4)中古太陽光発電所の売買に必要な手続き
(5)中古太陽光発電所の相場
(6)中古太陽光発電所の48のチェックポイント
最後まで読めば、業者の悪意の有無にかかわらず知識不足による損失の回避に役立つことでしょう。
また、記事の最後には、無料のプレゼントとして【中古太陽光発電所|契約前のチェックリスト】を用意しました。
A4サイズ1ページにまとめてありますので印刷しておけば業者に問い合わせをする際にも聞き忘れが減るはずです。
ぜひ、この記事で理解を深めたうえで活用してください。
1. 中古太陽光発電所とは
この章では中古太陽光発電所の概要を簡単に説明します。
1-1. 中古太陽光発電には産業用発電所、住宅用発電所の2種類がある
中古太陽光発電所とは、固定買取価格制度で売電開始している太陽光発電所が売りに出されたものです。
稼働済み物件、セカンダリー、中古物件、中古太陽光発電とも呼ばれます。
中古太陽光発電は次の二つに分かれます。
(1)産業用中古太陽光発電(10kW以上)
・発電出力が10kW以上
・野立て設置が多い
・発電所単位で売買される
(2)住宅用中古太陽光発電(10kW未満)
・発電出力が10kW未満
・主に住宅屋根の設置が多く、家屋の中古売買とセットで売買される
今特に注目を浴びているのが、産業用の中古太陽光発電所です。
1-2. 産業用(10kW以上)の中古太陽光発電所
固定価格買取制度(FIT制度)で売電している、発電出力10kW以上の太陽光発電所です。
産業用の中古太陽光発電所は次のような特徴を持っているため、投資先として注目されています。
・固定価格での売電期間が運転開始から20年ある(10kW未満は10年)
・野立て設置が多いため、土地と合わせて売買しやすい
・全量売電なので、発電所単位で売買しやすい
・住宅用よりも規模が大きく、投資対象としてちょうどよい
1-3. 住宅用(10kW未満)の中古太陽光発電(中古住宅)
固定買取価格制度(FIT制度)で売電している、発電出力10kW未満の太陽光発電所です。
発電所というよりは、太陽光発電付き中古住宅といった方がイメージしやすいと思います。
売買時の手続きは大変ですが、電気代が安くなる、売電期間中は高い価格での売電収入が得られるというメリットがあります。
反面、売買時の手続きに精通した業者が少なく、購入前後に手続きに苦労することも多いです。
1-4. 部材としての中古太陽光発電
何らかの事情で撤去され、中古品として売買されている太陽光発電パネルを中古太陽光発電と言います。
固定価格買取制度で売電している太陽光発電は、売電期間中に撤去することがほとんどありません。
中古パネルでは固定価格買取制度を活用できない場合が多いです。
趣味で利用する、電線を引けない場所で使用するといった用途に使われます。
2. 中古太陽光発電所のメリット7つ
産業用規模の中古太陽光発電所は、新規に太陽光発電を設置する場合と比べて大きなメリットがあります。
毎年売電価格が下がる中で、投資先として注目を浴びています。
この章では中古太陽光発電所のメリットを7つご紹介します。
(1)設置容量(太陽光パネル1kW)あたりの売電収入が多い
(2)事業開始(収入が入るまで)するまでが早い
(3)完工リスクがない
(4)基本的に法規制の手続きが必要ない
(5)発電実績があるので収支の予測を立てやすい
(6)出力制御のリスクが低い
(7)50kW未満でも全量売電できる
2-1. 設備容量(太陽光パネル1kW)あたりの売電収入が多い
中古太陽光発電所の一番の魅力は1kWhあたりの売電価格です。
太陽光発電は認定年度によって売電価格が異なります。
認定年度 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
売電価格(税別) | 40円 | 36円 | 32円 | 29円 | 27円 | 21円 | 18円 | 14円 |
パネル1kWあたりの年間売電収入(目安) | 40,000円 | 36,000円 | 32,000円 | 29,000円 | 27,000円 | 21,000円 | 18,000円 | 14,000円 |
同じ1kWの太陽光パネルでも、2012年度と2019年度の売電単価では売電収入に2.8倍以上の差が出ます。
【具体例】
50kW規模の太陽光発電所の場合。
2012年度価格:50,000kWh(発電量)×40円/kWh(売電価格)=200万円(税別)
2019年度価格:50,000kWh(発電量)×14円/kWh(売電価格)=70万円(税別)
2019年度の売電価格で20年間売電するよりも、2012年度の売電価格で10年間売電する方が売電収入が大きくなるのです。
同じ金額の発電所なら、売電期間が短くても中古太陽光発電所を選ぶ方がいる最大の理由です。
売電価格について詳しく知りたい方は次の記事をご確認ください。
2-2. 事業開始(収入が入るまで)するまでが早い
新しく太陽光発電を設置する場合、少なくとも4か月以上時間がかかります。
土地を探したり、農地転用等の規制、細かい条例の手続きから始めると1年以上時間がかかることも多々あります。
中古太陽光発電所の場合は、事前手続きや設置工事既に終わっています。
契約内容にもよりますが、経産省の名義変更と電力会社への名義変更、口座変更手続きが完了すれば事業開始となります。
早ければ2ヶ月程度での売電開始も可能と、事業開始するまでの時間が非常に短いです。
2-3. 完工リスクがない
中古太陽光発電所は売電している(稼働済みの)発電所なので、完工リスクが既に解消されています。
太陽光発電を1から設置する場合、次のような完工リスクがあります。
・法規制、条例の許可が下りない
・法規制、条例の許可条件として造成や貯水池の設置が必要になる
・工事開始後に周辺住民から反対される
・現地調査後、土地の造成が必要になる
・地中から埋設物、岩盤が出てきて施工方法の再検討が必要になる
・トラブルで部材の納期が遅れる
・工事中に盗難にあう
・電力会社の引込工事が遅れる(電柱用地が借りられないなど)
・追加の工事費負担金がかかる
どれか一つが発生するたびに、当初の予定より時間がかかったり、追加費用が必要になります。
最悪の場合、設置できない可能性もあります。
このようなリスクが解消済みなのは大きなメリットです。
2-4. 基本的に法規制の手続きが必要ない
太陽光発電所を設置する際には、当然ですが法律を守る必要があります。
農地転用や開発許可、河川法許可など様々な法律の手続きが必要か確認し、手続する必要があります。
確認や手続きには当然時間と費用が掛かります。
必要な手続きを見落としてしまうと、是正勧告や売電取り消しのリスクがあるので、必要なコストです。
太陽光発電の設置時にきちんと手続きしておけば、中古太陽光発電所として売買する際に改めて手続きする必要がありません。
発電所の所有者や仲介業者に、設置当時どのような規制があって、どう対応したか確認するだけで済みます。
運転開始後に農地転用していなかったことが発覚し、売電取り消しとなった事例もあります。
2-5. 発電実績があるので収支の予測を立てやすい
新しく太陽光発電所を設置する場合、発電量をシミュレーションして収支の予測を立てます。
あくまでシミュレーションなので、実際の発電量とは差が出ます。
同じ条件でシミュレーションしても、業者の技量と考え方によっても差が出ます。
中古太陽光発電所の場合は実際の発電量がわかるため、シミュレーションよりも正確な予測を立てることができます。
個人的な記録としては問題ありませんが、客観的な資料としては裏付けがありません。
2-6. 出力制御のリスクが低い
出力制御とは、電力会社が太陽光発電所に対して行う措置の一つです。
電気の需要量に対して発電量が多い場合に、電力会社の権限で、発電所の出力を下げる調整のことです。
発電所の出力が下がるということは、売電量が減る(売電収入が減る)ということです。
どの程度出力制御が行われるかは、次の2つによって異なります。
①電力会社に設置を申し込んだ時期
②太陽光発電所を設置した地域の電力会社
大まかな出力制御の対象・対象外の枠組みは次の通りです。
出力制御の対象 :東京電力、中部電力、関西電力以外の電力会社の売電価格32円※、29円、27円、24円、21円、18円、14円の太陽光発電
出力制御の対象外:全ての電力会社の売電価格40円、36円、32円※の太陽光発電
東京電力、中部電力、関西電力の管轄内の太陽光発電
※32円の物件は、対象の物件と対象外の物件が混在しています。慎重な確認が必要です。
32円以上の売電価格の物件は出力制御の対象外である可能性が高く、それ以下の売電価格でも出力制御をかける時間に上限があるルールが適用される物件があります。
東電、中電、関電以外の電力会社間内では無制限の出力制御が太陽光発電設置の条件となっていること、
今後も再生可能エネルギーの設置が続くため、時間がたつほど出力制御を受ける可能性が高くなることを考えると、非常に大きなメリットです。
出力制御について詳しく知りたい方は次の記事をご確認ください。
2-7. 50kW未満(低圧)でも全量売電できる
2020年度から、10kW以上50kW未満の太陽光発電所は全量売電の対象外となりました。
新しく全量売電の太陽光発電所を作る場合、50kW以上(高圧)となるため必ず電気主任技術者の選定と年次点検が必要になります。
なお、2019年度までに認定を取得していた場合、50kW未満でも全量売電できます。
2019年度までに認定を取得している中古太陽光発電は、50kW未満でも全量売電できます。
2020年度の太陽光発電の売電価格やあたらしいFIT制度については、次の記事で確認してください。
3. 中古太陽光発電所のデメリット11
中古太陽光発電所にはとても魅力的なメリットがある半面、デメリットもあります。
(1)稼働済みなので売電期間が短い
(2)事業計画認定と内容が違う場合がある
(3)売買できない物件がある(分割案件)
(4)設備の劣化を把握しにくい
(5)メーカー保証など継承されない場合がある
(6)現在の価値を判断できる【目利き】が必要
(7)土地購入のノウハウが必要
(8)権利委譲の手続きに必要な書類が多い
(9)発電所の設計を変更できない
(10)手持ちの現金、または融資を受けられる信用が必要
検討の際にはデメリットを理解して検討しましょう。
3-1. 稼働済みなので売電期間が短い
産業用太陽光発電の売電期間は運転開始から20年間です。
中古太陽光発電所は運転開始しているため、その分残り売電期間が短くなります。
購入するか検討している間にも残り売電期間が短くなっていきます。
事業開始がいつになるか想定した上で、収支のシミュレーションや金額の検討が必要になります。
3-2. 事業計画認定と内容が違う場合がある
事業計画認定の登録内容と実際の太陽光発電所の構成で内容が違う場合があります。
・パネルの型番が違う
・パネルの枚数が違う
・パネルの合計出力が違う
・発電出力が違う
申請していたパネルが廃盤になった、後から増設したが手続きを怠っていた等の理由です。
変更認定時に訂正できる違いであれば、訂正した方が良いです。
訂正すると売電価格が下がってしまうような違いの場合、購入しないほうが安全です。
3-3. 売買できない物件がある(分割案件)
太陽光発電を同じ場所に2つ設置することは分割案件として禁じられています。
管理コストの増大や、規制逃れを防ぐためです。
分割案件の判断基準は何度か変更されているため、設置当時は問題なかった発電所なのに、今は分割案件と判断されるものがあります。
分割案件と判断されると、事業計画認定の名義変更ができません。
名義変更ができないと、売電する権利を委譲できません。
先にも書いた通り、設置当時は問題なかったため、売主の方が気づかずに売りに出してしまう可能性があります。
前金を支払って手続きを進めていたら判明した、となっては貴重な時間の無駄になります。
詳しくは次の記事で解説しています。
3-4.設備の劣化を把握しにくい
太陽光発電の設備は経年劣化します。
屋外で風雨にさらされるため、環境によって劣化具合や汚れ具合が異なります。
雑草対策の防草シートやフェンスも当然経年劣化します。
特にパワーコンディショナーは、設置後10年以上たつと故障が目立ち始めます。
メーカー保証は10年程度のものが多いため、保証終了後は自費で修理または交換が必要です。
ランニングコストとして、交換・修理費用を見込んでおく必要があります。
そして、発電性能の劣化は目視では把握できません。
発電量実績も、毎年日射量が異なるため劣化の目安には使えません。
I-Vカーブ測定などの測定点検が必要になります。
どの程度劣化しているか、売買前に把握しておいた方が売る立場でも買う立場でもメリットがあります。
専門の業者に点検を依頼しましょう。
所有者の方は気付いていなかったのですが、本来あるべき発電量が1割下がっていたということです。
購入後に点検したら問題が山盛りだったとなっては、収支計画をいちから見直すことになります。
3-5. メーカー保証などが継承されない場合がある
産業用太陽光発電では太陽光パネル、パワコン、架台といった部材ごとにメーカー保証がついています。
そのため、部材ごとにメーカー保証を継承できるか確認する必要があります。
一部のメーカーでは、売買の場合は保証を継承できません。
住宅用のみ継承できるとしているメーカーもあります。
購入前に継承できるかの確認と、継承できない場合任意保険でカバーできるか確認が必要です。
3-6. 発電所の現在価値を算定する【目利き】が必要
中古太陽光発電所は残り売電期間の短さや劣化といったデメリットがあります。
また、全く同じ条件の発電所というものがありません。
相見積もりを取って、一番納得できるプランで購入するということができないのです。
残り売電期間や発電実績を踏まえて購入時点でどの程度の価値があるのか、目利きが必要になります。
3-7. 土地購入のノウハウが必要
分譲型の太陽光発電と同じく、土地の扱いをどうするかが問題になります。
賃貸にするのか、土地も売買するのか、相場はいくらかといった交渉も大変ですが、
測量や登記、契約書、重要事項の説明など、素人には手に余る問題です。
曖昧にしておくと後々のトラブルにつながりますので、素直に専門家の力を借りましょう。
3-8. 権利移譲の手続きに必要な書類が多い
中古太陽光発電所の売買には、まず経産省の事業計画認定の変更認定手続きが必要で、次に電力会社への手続きが必要です。
特に経産省への手続きは複雑で必要な書類も多く、売主、買主両方の書類を整えるのも大変です。
手続内容が変更になることも多く、売買しようとする際に最新の情報を確認する必要があります。
他にも土地の売買(賃貸)契約に伴う手続きや、権利移譲後のメーカー保証、任意保険手続きもあり、すべて終わるまでには時間がかかります。
3-9. 設置済みなので発電所の設計を変更できない
中古太陽光発電所はすでに運転開始しているため、自分の好みにカスタマイズすることができません。
パネル配置に不満があっても、変更できません。
太陽光パネルやパワコン、架台を変更しても、費用がかかるだけであまり意味がありません。
それどころか、パネル出力やパワコン出力が増えてしまうと売電価格が下げられてしまいます。
山や河川などに近くても、移設することもできません。
提示された設備で納得できるかを考えましょう。
3-10. 手持ち資金、または融資を受けられる信用が必要
中古太陽光発電所の購入は2つの意味で早い者勝ちです。
検討や資金の手配に時間がかかりすぎると、他の人が購入してしまうかもしれません。
また、購入までに時間をかければかけるほど、残りの売電期間が短くなります。
良い物件を見つけたら、できるだけ検討や資金の手配にかける時間を短くする必要があります。
そのためには手持ちの現金で決済するか、短時間で融資を受けられる信用が必要です。
4. 中古太陽光発電所の売買に必要な手続き6つ
3章で少しご紹介した通り、中古太陽光発電所の売買には複数の手続きが必要です。
この章では必要な手続き6つをご紹介します。
基本的な手続きの順番は次の通りです。
①発電所の売買契約
②土地の手続き、経産省への変更認定申請、保証、保険の手続き
③電力会社への名義変更および口座変更手続き
このほかにも、遠隔監視装置や定期メンテナンスに加入している場合、継承するか乗り換えるか判断が必要です。
仲介業者、販売業者がどこまでカバーしてくれるか確認しましょう。
4-1. 発電所の売買契約
発電所の売買契約が一番最初の手続きです。
経産省への手続き時に発電所の売買契約書が必要なので、早く購入したければ契約を急ぐ必要があります。
中古太陽光発電所の場合、設備の内容に加えて特に次の3点の確認が重要になります。
・発電所の名義を変更する時期はいつか
・売電の権利移譲が遅れた場合どうするか
・支払いの時期はいつか
中古太陽光発電は名義変更がいつ終わるかによって残り売電期間が異なります。
売買契約の締結で所有権は移ったと考えていても、経産省の名義変更および電力会社の名義変更・口座変更が終わるまでは、収入を受け取ることができません。
想定よりも手続きに時間がかかった場合、その間の売電収入をどうするか取り決めておきましょう。
4-2. 経産省への手続き・名義の変更認定申請
売電する権利を委譲するための手続きです。
基本的には経産省への変更手続きが完了しないと、電力会社への名義変更・売電口座変更手続きができません。
土地に関する手続きや、メーカー保証、任意保険の手続きと並行して行えます。
その中でも優先してやってもらいましょう。
10kW以上50kW未満の太陽光発電は電子申請システムで申請します。
50kW以上の場合は、電子申請システムで書類を作成し、書面を郵送して申請します。
形式上、譲受人(購入する人)が申請することになっていますが、意外と複雑な操作が必要です。
販売業者または仲介業者が代行してくれるか確認しましょう。
2020年3月時点で、名義の変更認定申請に必要な書類は次の通りです。
① 譲渡契約書(発電所の売買契約書)
② 売買する双方の履歴事項全部証明書(法人の場合)
住民票の写し、住民票記載事項証明書または戸籍謄本(抄本)のいずれか(個人の場合)
③ 売買する双方の印鑑証明書
④ 売電開始日が記載された電力会社発行の書類※
※発電所が運転開始してからはじめての変更認定の場合のみ必要
公的書類は申請日の3か月前の日付のものまでが有効です。それより古いと再提出になります。
契約時に双方の公的書類を準備するのが効率的です。
4-3. 土地の手続き(売買or賃貸)
発電所を設置している土地は売買するか、売電期間中賃貸する必要があります。
土地を売買するなら測量図を登記したほうがトラブルが少ない
売買の場合、下記の手続きが必要になります。
・土地の売買契約
・土地の測量※
・隣地所有者との境界確認
・土地の所有名義の登記
・測量図の登記※
測量図の登記は、のちのちの隣地との境界トラブルを防ぐために有用です。
費用との兼ね合いもありますが、可能ならお勧めします。
土地を賃貸するなら賃借権の設定を忘れずに
賃貸の場合は、他人の土地に1,000万円以上の機材を置いて、10年以上もの間発電事業を行います。
売電期間が終わる前に、土地を返してくれと言われては予定通りの収支を達成できません。
必ず賃借権を設定し、登記しましょう。
4-4. メーカー保証の手続き
メーカーによってはメーカー保証を継承できない場合があります。
新しい所有者名義の保証書を発行してくれるかも、メーカーによってまちまちです。
太陽光発電所を設置した業者もしくは部材を販売した業者経由での申し込みが必要なメーカーがほとんどです。
契約時に販売店、設置店が健在か、中古太陽光発電所の販売業者が仲介もしくは手配してくれるか確認しましょう。
主要なメーカーについて、保証を継承できるか、手続きはどうするか等問い合わせた結果を公開しています。
次の記事を参考にしてください。
4-5. 任意保険の手続き
メーカー保証では自然災害や事故、いたずらといった、メーカーに責任のない原因で故障した場合をカバーできません。
また、故障中に得られなかった売電収入をカバーすることもできません。
自然災害や事故、いたずらなどでの故障リスクや、それに伴う売電収入減少をカバーするために任意保険への加入が必要です。
発電所の所有権が切り替わる日付に合わせて加入しましょう。
4-6. 電力会社への手続き(名義変更、売電口座変更)
電力会社への手続きは2つあります。
発電所所有者の名義変更と、売電収入の振込口座変更です。
各社ごとに手続き書類が異なるため、担当の営業所に確認が必要です。
売電収入の振込口座の変更が完了すれば、最低限の手続き完了です。
4-7. そのほかの手続き(遠隔監視装置・定期メンテナンス等)
ここまでご紹介した手続き以外にも、継承や変更の手続きが必要になる場合があります。
・遠隔監視装置の契約者、アラート通知先変更
・設置業者の施工保証の継承
・定期メンテナンスの継承または変更
どのような手続きが必要になるか、次の記事でご紹介しています。
参考にしてください。
5. 中古太陽光発電所の相場
中古太陽光発電所では、相見積もりを取って一番いいプランを選ぶということができません。
全く同じ条件の発電所というものもないため、それぞれの条件を比較して自分が納得できる発電所を選ぶ必要があります。
5-1. 容量や設置年数、売電単価に応じた相場はない
中古太陽光発電所の価格は、様々な要素に影響を受けます。
・売電単価
・設置規模(太陽光パネルの容量、パワコンの容量)
・設置からの経過年数
・実発電量
・予想の表面利回り
・設備の劣化具合(太陽光パネル、パワコン、架台、フェンス、雑草対策)
・ランニングコスト(税金、監視装置、雑草対策など)
・土地の価格
・売る人の希望
・買う人の希望
新規で設置する太陽光発電のように、1kWあたり◯◯円ぐらいが相場、といったものがありません。
中古太陽光発電の価格は、新規設置とは違う目線で考える必要があります。
5-2. 目安は実利回りと残り売電期間
全ての要素を踏まえて価格が妥当か検討するのは簡単ではありません。
また、検討に時間がかかりすぎると、想定していた売電開始日に間に合わなくなったり、先に売れてしまう可能性があります。
中古太陽光発電所の価格を検討する際は、実利回りと残り売電期間を目安にしましょう。
実利回り | 残り売電期間 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11年 | 12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 | 18年 | 19年 | |
9% | 99% | 108% | 117% | 126% | 135% | 144% | 153% | 162% | 171% |
10% | 110% | 120% | 130% | 140% | 150% | 160% | 170% | 180% | 190% |
11% | 121% | 132% | 143% | 154% | 165% | 176% | 187% | 198% | 209% |
12% | 132% | 144% | 156% | 168% | 180% | 192% | 204% | 216% | 228% |
13% | 143% | 156% | 169% | 182% | 195% | 208% | 221% | 234% | 247% |
残り売電期間が短いほど、高い実利回りでないと利益が出ません。
売電期間が長いほど、運転開始までにかかった費用もあって高い利回りは期待できません。
表面利回りで収益を計算してしまうと、ランニングコストがかさんで赤字になってしまう可能性もあります。
6. 中古太陽光発電所購入時のチェックポイント48
実際に中古太陽光発電所の売買を検討するときに、どういった点に気を付ければよいのでしょうか。
この章では、中古太陽光発電の売買時に気をつけるべき主なチェックポイントをご紹介します。
6-1. 土地の名義、登記に関する4つのポイント
(2)土地の名義を確認し、売主本人以外の名義がある場合は売買(賃貸)の同意を得る
(3)測量や登記の費用負担をどちらがするか明確にする
抵当に入れたままの土地を買ってしまうと、後々競売にかけられ所有権を失う可能性があります。
土地の名義が売主本人ではなく、ご家族や親族もしくは複数人での所有となっている場合、全員の了解を得られないと土地の売買や賃貸ができません。
契約前に、売買または賃貸に同意を得てもらう必要があります。
費用負担は契約時までにはっきりしておかないと、トラブルの元です。
賃貸の場合、売電期間中は賃借権を登記しておかないとトラブルの元です。
6-2. 発電所敷地に関する5つのポイント
(3)敷地の造成に不備はないか確認する
(4)どのような雑草対策をしているか確認する
(5)車で通れる接道があるか確認する
どんなに日当たりが良い発電所でも、崖下や川沿いの太陽光発電所は大きな災害時にどれほどの被害が出るかわかりません。
土地を造成していた場合、土壌の流出や地盤沈下している可能性もあります。
特に森林を伐採した後の傾斜地(のり面)に設置している場合はそのリスクも大きく、安全対策が必要なため点検費用も割高になります。
雑草対策がされていない、車の通れる接道がないといった土地では、ランニングコストがかさみます。
どんな土地に設置されているか確認が必要です。
6-3. 発電所の周辺環境に関する4つのポイント
(2)工場や飲食店など、汚れの原因となる煙を出す施設の風下になっていないか確認する
(3)野生動物による故障が発生していないか確認する
太陽光パネルが汚れやすい環境や故障しやすい環境では、いくら売電収入が高くても収益は低くなります。
近隣住民とトラブルを抱えている発電所では、気が休まりません。
動物が原因の故障は、対策しない限り繰り返す可能性が高いです。
周辺環境に問題はないか、自分で解決できる問題なのかチェックしましょう。
6-4. ランニングコストに関する5つのポイント
(2)ランニングコストに抜けているものはないか確認する
(3)利回り計算にランニングコストを含めているか確認する
(4)土地を賃貸する場合は、土地の固定資産税をどちらが負担するか明確にする
(5)賃貸の場合、賃料もランニングコストに含めて利回りを計算する
太陽光発電設備は償却資産税がかかります。
野立ての場合は土地の固定資産税もかかります。
他にも、義務となっているメンテナンスの費用や雑草対策の費用、監視装置がある場合はそのランニングコストがかかります。
これらのランニングコストを計算に入れずに利回りを計算してしまうと、収支計算に大きなズレが出ます。
抜けている項目はないか確認しましょう。
6-5. 設備に関わる権利の14のポイント
設備に関わる権利はここをチェック
(1)事業計画認定の名義を変更できる設備か確認する
(2)売電価格はいくらか電力会社の書類で確認する
(3)これまでの売電実績を電力会社の明細または監視装置の記録で確認する
(4)残り売電期間は何年何ヶ月か確認する
(5)事業計画認定のID、パスワードはどのタイミングで譲渡するか確認する
(6)メーカー保証は残っているか確認する
(7)メーカー保証を継承できるか確認する
(8)売電の権利に抵当権が設定されているか確認する
(9)売電の権利の抵当権をいつ、どのようにして抹消するか確認する
(10)設備に抵当権が設定されているか確認する
(11)設備の抵当権をいつ、どのようにして抹消するか確認する
(12)出力制御の対象になっているか確認する
(13)出力制御対応機器を設置済みか確認する
(14)売電先は大手電力会社か、新電力会社か確認する
まず大切なのが売電する権利(事業計画認定)です。
それも、売電価格や残りの売電期間、名義変更の可・不可、権利に関わる手続きが可能なIDとパスワードといった、具体的な内容が大切です。
また、太陽光発電所をローンで購入していた場合、土地だけでなく、太陽光パネル、パワーコンディショナーといった部材にも抵当権がついている場合もあります。
きちんと抹消してもらうことが必要です。
6-6. 発電設備に関する12のポイント
(4)架台メーカーの日本での実績を確認する
(5)集電箱のメーカー、型番、ブレーカー容量を確認する
(7)キュービクルのメーカー、型番を確認する(高圧)
(8)主任技術者の契約を継承できるか確認する(高圧)
(10)直射日光の当たる場所の配線がPFD管などで保護されているか確認する
(11)最後にメンテナンスを実施したのはいつか確認する
発電設備で大切なのは、劣化具合もですが、どんな部材を使用しているかも重要です。
故障時の交換・修理といった、ランニングコストに影響するためです。
1社しか製造していない特殊な寸法のパネルでは、故障した時に交換できない可能性があります。
4.2kWや8kWのパワコンは、同じ出力のパワコンが製造されていません。
代替品の選択を間違えると売電価格が下がってしまいます。
もう一つ大切なのが、どのような設置状況にあるかです。
直射日光が当たる場所にパワコンを設置していては、故障しやすい上メーカー保証の対象外です。
配線の保護がないと、今は問題なく発電していても漏電や断線の危険があります。
サージ保護装置(雷対策)を設置してある発電所だと、落雷による停止の危険性が低いことに加え、保険料が安くなる保険会社もあります。
最後に、劣化具合を確認する際には最後にメンテナンス(点検)した時期の確認が必要です。
産業用の太陽光発電所には、4年に1回以上の点検が義務付けられています。
点検の結果問題はありませんでしたと言われても、3年前の点検結果では不安が残ります。
売買前にメンテナンスを実施できるのが理想です。
6-7. 周辺設備に関する9つのポイント
(2)フェンスの高さ、種類、基礎を確認する
(6)設置している監視装置の種類を確認する(発電量監視、監視カメラ、警報装置など)
発電量には直接関わらない周辺設備も大切です。
フェンスや標識の設置、立入禁止の表示は義務化されています。
設置してあっても、低すぎて簡単に乗り越えられるものでは義務化の要件を満たしていません。
網目が粗すぎて子供の手が太陽光パネルに届くようでは、同じく義務化の要件を満たせません。
フェンスの種類によっては安い代わりに補修が必要な場合もあります。
未設置の発電所を購入するなら、必ず対応が必要です。
補修が必要でも安いフェンスの発電所が良いか、多少高くてもしっかりしたフェンスが必要と考えるか、自分の希望をはっきりさせる必要があります。
遠隔監視装置も必要な設備です。
普段使用しなくても、トラブル発生時の対応に有効です。
出力制御機器の設置が義務となっている発電所では、対応機器が設置されているかも重要です。
出力制御開始までに設置しないと、売電が取り消される可能性もあります。
発電量には関係ないから、と甘く見ずにチェックしましょう。
購入後に標識を付け直すのを忘れないようにしましょう。
6-8. 一度は現地を訪れて、自分の目で確認する
中古太陽光発電所を売買する際のチェックポイントは多岐に渡ります。
書類上でわかることもあれば、実際に現地を訪れないとわからないこともあります。
購入前に一度は現地を訪れて、自分の目でも確認するようにしましょう。
まとめ
中古太陽光発電所は、独自のメリットがある反面デメリットもあります。
デメリット・リスクを回避するためのチェックポイントが多くてびっくりしたのではないでしょうか。
発電している実績があることに安心して、書面上の収支計画だけ見て判断してしまうと思わぬトラブルに繋がります。
今問題が表面化していなくても、将来のトラブルの種を抱えている発電所もあります。
良く見える物件ほど、先に誰かに買われてしまったらと不安になりますが、焦らずに一通りチェックして検討しましょう。
売買時に一度メンテナンスしておくと、発電所の情報が明確になって安心です。
最後に、【中古太陽光発電所|契約前のチェックリスト】を用意しました。
6章の内容を一通りチェックできるリストです。
中古太陽光発電所の購入を検討される方はご活用ください。