太陽光発電のO&M(メンテナンス)が5分でわかる全体像と費用の解説

太陽光発電のO&Mとは

最終更新日:2017.7.24

太陽光発電が普及してから数年が経ち、不具合や故障が表面化してきました。

また、2017年4月1日からはじまった「改正FIT法」により、低圧の太陽光発電設備の一部もメンテナンスが義務化されたことで気になっている方も多いのではないでしょうか。

実は、メンテナンスと言っても必須のものから設備によっては不要なものまで、様々です。太陽光発電も機会である以上は、時間経過とともに劣化(=発電量の低下)していきます。肝心なのは、可能な限り長く安全安心のもと、設備に最大限のパフォーマンスを発揮させるかという点です。

このページでは、太陽光発電のO&Mについて言葉の意味から概要までの基礎的な内容を解説しています。まだメンテナンスを受けたことがない太陽光発電オーナーの方や、これから設置を検討されている方は、売電後にどのようなものが必要になるかをまずは知っておきましょう。


1.太陽光発電のO&Mとは何か?

太陽光発電のメンテナンスの種類

太陽光発電所のO&M(オーアンドエム)と聞いても、何を略したものなのかよくわかりませんよね。

メンテナンスのことなんだろうけど…と思われた、ほとんど正解です!

ここでは、より正確に言葉の意味とその目的を確認しましょう。

1-1.「O&M」の言葉の意味

太陽光発電のO&Mとは太陽光発電所の【運用管理】と【保守点検】」という意味です

O&MO」とはOperation:オペレーションの頭文字です。
運転管理(安定的な利用)」を意味します。

O&Mの「M」とはMaintenance:メンテナンスの頭文字です。
保守点検管理(整備・維持)」を意味します。

1-2. 「O&M」の目的は、安心安全を前提とした設備の長期的な安定稼働

エラー

安心安全を前提とした長期安定稼働がO&Mの目的です。

太陽光発電は、多くの場合、お家の屋根・所有している土地・社屋などに設置されています。
そして、太陽光発電が作り出す電気は、自家で消費されたり、固定買取価格制度(FIT)のもと電力会社に売っています。

太陽光発電は必ず壊れる

ここで忘れてはいけないのが、どんなに高いものでも、機械はいずれ壊れるということです。その壊れるまでの時間が早いか遅いかがポイントで、複雑なものはシンプルなものに比べて早く壊れる傾向にあります。(太陽光発電は、壊れにくい部類に入ると思いますが)

壊れる理由は、2つに分けられます。

内部の起因によるもの(製品の不良や経年劣化など)
外部の起因によるもの(人的なものや天候によるものなど)

つまり、丈夫なものでもイタズラや天災などで外部から壊される場合もあるのです。

壊れた時にどのような影響があるか

・人的な被害

内部・外部の原因を問わず、火災や漏電が発生すれば人的な被害が発生するかも知れません。これは、必ず避けなければいけません。

・経済的な損失

太陽光発電は、固定価格買取制度により急激に普及しました。これは、環境貢献的な側面だけではなく、経済的なメリットにも魅力を感じて導入した方も多くいらっしゃるとも考えられます。太陽光発電の初期投資を回収し売電で利益を得るためには、導入費用を回収するためにある程度の期間が必要です。

その間に、不具合や故障・事故が発生すれば、投資回収の計画は考え直す必要が出てきます。

O&Mが必要な理由

・事故、不具合、故障を未然に防ぐ 
・発生後に被害を最小限にす

言い換えれば、安心安全のもとそのズレを最小限に近づけよう、というのがO&Mの目的です。
それでは、次の章でO&Mの具体的な種類をお話しします。

低圧太陽光発電のO&Mが義務化されました。
必要な点検項目や費用、回数については次の記事をご確認ください。

家庭用太陽光発電に必要なメンテナンス|義務化の点検項目・費用・回数

 


2.太陽光発電のO&M 4つの種類

O&Mの意味は、概要はお分りいただけたと思います。では、次にO&Mの内容についてもう少し細かく解説します。

2-1. O&Mの全体像

まずは、下の画像をご覧ください。
運転管理業務(Operation)】と【保守点検業務(Maintenance)】の目的を確認しましょう。

O&Mの種類 

【運転管理業務】とは
【運転管理業務】とは、太陽光発電システムの売電量を、最大化(=発電の損失を最小化)するために行う業務です。
太陽光パネルやパワーコンディショナーが適切に運転できるような管理をします。
具体的には、「発電量監視」と「障害時の復旧対応」の2つが主な内容です。
・「発電量監視は、発電量を見える化することです。
・「障害時の復旧対応は、虫歯が痛くて歯医者さんに駆け込むようなイメージです。

具体的な内容については後述します。

【保守点検管理業務】とは
【保守点検管理業務】とは、太陽光発電システムの機器が、正常に運転できる状態を確保する業務です。
リスクを未然に防ぐために行い、保安と維持を目的としています。
具体的には、「定期点検」と「サイト管理(敷地・用地)」の2つが主な内容です。
・「定期点検とは、6ヶ月ごとや1年ごとなど、決められたスケジュールに発電設備の点検をすることです。健康診断車検を思い浮かべていただくと分りやすいかもしれません。
・「サイト管理(敷地・用地管理)とは、発電設備のある屋根や土地の管理と設備全体の見た目の管理です。

具体的な内容については後述します。

2-2. 太陽光発電の発電監視とは|(運転管理・Operation)①

太陽光発電の発電監視とは

発電量監視とは、文字通り発電量を定量的に把握する(見える化する)ことです。

発電量の監視が必要な2つの理由

①なぜ、見える化が必要かというと、あなたの発電設備がきちんと効率よく稼働しているかどうかは、設備の外観を見ただけではわからないからです。

発電量の監視は、あるべき状態と現状を客観的な基準で比較するために必要です。

②また、設備は長期間使い続けるものなので、当然経年劣化や故障が発生します。その時に役立つのが、見える化された過去の記録です。なぜなら、ほとんどのパネルメーカーは製品の出力保証をしています。しかし、「なんとなく下がった気がする」というだけでは調査にも来てくれません。主張するには根拠が必要だからです。

発電量を確認する方法

ほとんどの方は、次のいずれかの方法で自分の設備の発電量を認識しています。

①. 発電監視装置で好きな時に好きな期間の発電量を確認する。
②. 直接発電設備のある場所に行って電力メーターの記録し続ける。
. スマートメーターを電力会社の無料アプリで確認する。
④. 
電力会社からの毎月のお知らせを見て1ヶ月分を確認する。

もし、発電所が近くにあるのでしたら直接、発電所に行くのも良いかも知れません。

しかし、発電監視に求められる役割とは次の3つです。

 発電監視に求められる3つの役割

①. 発電量の見える化
②. 発電量の記録
③. 発電低下時(または発電停止時)等の異常時のアラート(認知)

特に、任意保険で休業補償などに加入している場合や、発電所を手放す(誰かに売る)場合などは発電量を客観的に明らかにすることができます。

ご自宅や社屋等の生活の中心となる場所以外で、太陽光発電を設置する際に必須の機器といえるでしょう。
また、太陽光発電の設備の異常は、目で見ただけではわからないものがあります。一見キレイでも発電はしていない…ということもあります。

そして、太陽光発電は長期事業です。今は良くても10年、20年と発電量を人力で記録し続けるのは大変ですよね。

《発電量遠隔監視の関連記事》

 あなたの太陽光発電所は大丈夫?遠隔監視にできることできないこと
 エコめがねの初期設定とログイン方法|発電量監視の基本操作ガイド

 

2-3. 太陽光発電の障害対応・復旧対応とは|(運転管理・Operation)②

駆け付け初期対応

障害対応・復旧対応とは、発電所でなんらかの不具合を検知した際の対応です。
例えば、それはパワコンの停止かもしれません。
もしくは、火事や落雷、積雪などの自然災害による被害かもしれません。
いずれにしても、「発電所のあるべき状態」から逸脱した「事後」の復旧対応のことです。
発電監視装置があれば、発電量の異常を検知するのに役立ちます。
異常の多くは、緊急の対応が必要となりますのでフットワークが軽く、車で1〜2時間圏内に本拠地のある業者が安心でしょう。

2-4. 太陽光発電の定期点検とは|(保守点検管理・Maintenance)①

太陽光発電の定期点検とは

定期点検とは、太陽光発電設備に何か故障や不具合が起きないためにするための対応です。

予防保全とも言われます。人間が健康でも定期検診をするのと似ていますね。本人に自覚がなくても不具合は思わぬところに潜んでいます。また、虫歯と同様に放っておけばどんどん悪化していきます。早期発見が重要です。

設備の安全性を守るためには、定期的な点検を行うことが必要です。

2017年3月31日までは、設備容量が50kW以上の「高圧」・「特別高圧」の発電所は、法令で点検が定められています。50kW未満の「低圧」に区分される太陽光発電設備はその規定がありませんでした。

しかし、「規定が無い=保守点検が不要」ということではありません。
保守点検の内容は、機器の腐食や損傷、摩耗を発見することがメインですが、これは発電所の規模の大小と劣化の進行は無関係だからです。

・点検項目は多数
定期点検で、見るべき項目は多数あります。
ソラサポでは、社団法人日本電機工業会のJEMTR228(小出力太陽光発電システムの保守・点検ガイドライン)をベースに、維持管理に必要な32項目の点検サービスを提供しております。住宅用(屋根設置)と産業用(地面設置)の2つのプランがあります。

2-5. 太陽光発電のサイト(用地・敷地)管理とは|(保守点検管理・Maintenance)②

サイト管理(用地・敷地管理)とは、発電設備が設置してある用地全体の管理です。
管理すべき内容は大きく分けて4つあります。

①. 太陽光パネル洗浄・清掃

太陽光パネルの洗浄・清掃太陽光パネルの洗浄は、雨で落ちない汚れを落とすことができます。
これには、2つの効果(目的)があります。
・発電量の回復
・パネルの焦げ付きやホットスポット化の防止
《太陽光パネル清掃の関連記事》
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②. 雑草対策(除草、防草)

雑草対策をしていない太陽光発電所雑草対策は、5つの効果(目的)があります。
発電量の減少や、パネルの故障に直接影響しますので優先的に実施すべきメンテナンス内容です。
・通路の確保
・日照の確保(雑草の影による発電量の損失回避)
・パネルのホットスポット化の回避
・動物の棲みつき防止
・近隣住民・環境への配慮


《太陽光発電の雑草対策の関連記事》
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③. 損害保険加入

太陽光発電所の損害保険保険加入は、メーカー保証の範囲外となる(ことが多い)自然災害や盗難または休業時などの補償が必要な時に心強い味方となります。
太陽光発電は、売電単価と期間が定められているとても安定した事業ですので、保険は必要経費と考えるのをおすすめします。
無保険の自動車事故が大きなトラブルになるように、自分で被害の金銭的な対応ができない場合は、第三者(銀行、家族、近隣等)に迷惑をかけることになります。

④. 盗難・侵入対策

セキュリティ施策として、求められるのは侵入防止柵(フェンス)です。
他にも、監視カメラや照明器具が挙げられます。
低圧の場合、フェンスを設置する人は多くいらっしゃいますが、監視カメラと照明を設置される方はわずかです。

・注意喚起看板で、設備への侵入を抑制しましょう。

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太陽光発電のO&M まとめ

太陽光発電のメンテナンスと一口に言っても、実はかなり奥が深いことがお分りいただけたでしょうか。

太陽光発電をお持ちの方も、これからご検討される方も、いずれ必要になりますので、下図の予防策の考え方と、をご参考にしていただくとお役に立てるかもしれません。

予防策の考え方

最後に、O&Mで重要なポイントを4つにまとめました。

①. 太陽光発電のO&Mには、発電監視や障害対応が主になる「運転管理」と、定期点検やサイト管理が主の「保守点検管理」がある
②. 太陽光発電のO&Mの目的は、安心と安全を前提とした設備の長期安定稼働である
③. O&Mは、法的な実施義務が無い設備であっても長期運用を考えると必要になる
④. 改正FIT法によって、低圧の太陽光発電設備であってもメンテナンス計画の作成と実施義務が発生した

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