太陽光発電の見積もりをもらったあなたは、見積書に記載されている
【 工事費負担金:別途(工事費負担金は含まれておりません) 】
という文言が気になったのではないでしょうか?
そして、このようなことをお考えではありませんか?
・どのくらいの費用なのか見当もつかないの?
・「工事費負担金」で莫大な請求が来ないかな?
・「工事費負担金」を事前に知る方法はないかな?
- 工事費負担金とは
- 工事費負担金とは、太陽光発電所に引き込む電線と、工事にかかる費用です。詳しくは「1章」で後述します。
実は、2016年から一部の電力管内(東京電力、中部電力、関西電力、九州電力)では50kW未満の低圧の発電設備について、「工事費負担金」を事前に知る計算式が電力会社によって公開されています。
以前は電力会社に対して「電力申請」の手続きを行い、2、3ヶ月待たなくては正確な費用がわからなかったのですが、事前に大まかな費用の目安がわかるようになったので、次のようなメリットができました。
・業者の説明不足による予想外の出費がなくなる
・事前に費用がわかることで実態に近い投資効率がわかる
この記事では、「工事負担金とは何か?」というそもそもの話から、「工事費負担金の目安」を知る方法と、注意点について丁寧に解説しています。
最後まで読んでいただければ、あなたはより正確な太陽光発電の投資計画を立てる(または見直す)ことができるでしょう。
1. 工事費負担金とは
1-1. 電線網と発電所をつなぐために必要なお金
工事費負担金とは、発電設備を電線網につなぐために必要な部材や工事にかかるお金です。
電線網を維持・管理している一般送配電事業者(電力会社)に工事費負担金を支払って、電線につないでもらいます。
電力自由化について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
1-2. 10kW未満の場合は原則売電メーターの費用だけ必要
10kW未満の場合は、余剰売電(家などで使ってから余った電気を売電する)です。
もともと設置されている電線を利用して売電します。
そのため、電線の引き込み工事費は原則かかりません。
売った電気の量を測定する売電メーター(計量器)の費用だけが必要になります。
10kW未満なのに、売電メーター以外の工事費負担金が必要だと言われたら管轄の電力会社になぜ必要なのか問い合わせましょう。
1-3. 工事費負担金の金額が決まるまでのステップ
電力会社へ売電を申し込んでから工事費負担金の金額が決まるまでに、3つのステップがあります。
STEP1.電力会社へ売電を申し込む
発電所の場所や規模、使用する部材といった資料を揃えて、電力会社へ売電を申し込みます。
電力会社は受け取った資料をもとに、次の設計を行います。
STEP2.発電所を電線網につなげるルートや必要な設備を設計する
電力会社は発電所までどうやって電線を通すか、電柱の増設は必要ないか、どんな太さの電線を使うのか、何mの電線が必要か、といった設計をします。
必要な部材の種類や量が決まったら、工事費負担金の算定に入ります。
STEP3.工事費負担金を算定する
設計をもとに、工事費負担金を計算します。
あらかじめ決められた単価表をもとに計算する電力会社と、部材ごとに細かく計算していく電力会社があります。
1-4. 金額の確定が接続契約に必要
電力会社は、原則として工事費負担金が確定してから接続契約を結びます。
工事費負担金の請求書が届くのと同じ頃に、事業計画認定申請に必要な「接続の同意を証する書類」も届きます。
どちらか片方しか届かない場合は、設置業者に届いていることもあります。
設置業者に届いていないか確認しましょう。
2. 工事費負担金の目安
2-1. 発電所ごとに工事費負担金を計算する電力会社
発電所ごとに計算する電力会社管内では、経験をもとに金額を推測するしか方法がありません。
電線の距離が長いと非常に高額になる、計算が終わるまで時間がかかる傾向にあります。
太陽光発電の見積もりの際に、設置業者に「同じような規模、条件の案件ではいくらぐらいだったか」と確認してみましょう。
案件ごとに計算する電力会社は次の通りです。
- 北海道電力
- 東北電力
- 北陸電力
- 中国電力
- 四国電力
- 沖縄電力
2-2. 必要な工事の種類ごとに発電出力1kWあたりの単価が決まっている「単価制」の電力会社
一部の電力会社(東京電力、中部電力、関西電力、九州電力)では、必要な工事の種類ごとに、発電所の発電出力1kWあたりの単価を決めて、一覧表として公開しています。
このような単価制を採用している電力会社では、公開されている単価表から工事費負担金をある程度推測できます。
年度で更新される場合があります。最新のものを確認しましょう。
使用する電線の種類や、電柱を新たに建てるかなどは電力会社の設計が完了してからしかわからないため、一番高額なパターンで想定しておきましょう。
電力会社 | 発電出力1kWあたりの税込単価(目安) | 単価表 |
---|---|---|
東京電 (TEPCO) | 1,700〜10,500円/kW | 再生可能エネルギー発電設備の低圧架空電線路への連系に伴うkW工事費負担金単価の設定のお知らせ |
中部電力 | 4,800〜13,500円/kW +150,000円/電柱(本) | |
関西電力 | 900〜4,200円/kW +22,800〜171,300円/工事規模 | 再生可能エネルギー発電設備の低圧架空電線路への系統連系に伴うkW工事費単価の設定についてのお知らせ |
九州電力 | 3,240〜13,500円/kW |
単価表の金額とは別に、売電メーターの工事費がかかります。
発電設備の規模によりますが、15,000円から30,000円多めにかかると考えてください。
引き込み線や低圧線、変圧器といった、どこまでの工事が必要かによって単価が異なります。
東京電力(TEPCO)の工事費負担金の目安
東京電力(TEPCO)では、発電出力の小数点第1位を切り捨てた値と単価をかけて計算します。
もっとも高い単価の場合で、次の金額が目安となります。
発電出力 | 工事費負担金(税込)の目安 |
---|---|
10kW | 105,000円 |
20kW | 210,000円 |
30kW | 315,000円 |
40kW | 420,000円 |
50kW | 525,000円 |
東京電力(TEPCO)の工事費負担金を目安を知るための計算式は次の通りです。
工事費負担金額の目安 = 発電出力(kW) × 工事単価(円)
東京電力(TEPCO)では、変圧器の工事まで単価が決められています。
高圧線の工事が必要な場合は個別計算になります。
中部電力の工事費負担金の目安
中部電力では、発電出力の小数点第1位を四捨五入した値と単価をかけて計算します。
もっとも高い単価の場合で、次の金額が目安となります。
発電出力 | 工事費負担金(税込)の目安 |
---|---|
10kW | 135,000円 |
20kW | 270,000円 |
30kW | 405,000円 |
40kW | 540,000円 |
50kW | 675,000円 |
中部電力の工事費負担金を目安を知るための計算式は次の通りです。
工事費負担金額の目安 = 発電出力(kW) × 工事単価(円) + 新しく建てる電柱の本数 × 電柱の単価
中部電力では、高圧線の工事まで単価が決められています。
そのため、単価表に個別計算になる場合の記載がありません。
関西電力の工事費負担金の目安
関西電力では発電出力の小数点第1位を切り捨てした値と単価をかけて計算します。
もっとも高い単価の場合で、次の金額が目安となります。
発電出力 | 工事費負担金(税込)の目安 |
---|---|
10kW | 213,300円 |
20kW | 255,300円 |
30kW | 297,300円 |
40kW | 339,300円 |
50kW | 381,300円 |
工事費負担金を目安を知るための計算式は次の通りです。
工事費負担金額の目安 = 発電出力(kW) × 工事単価(円)+ 工事規模による料金(22,800〜171,300円)
関西電力では、変圧器の工事まで単価が決められています。
以下の2つの場合では個別計算になります。
・電柱を建てる必要がある場合
・高圧線の工事が必要な場合
電柱を建てる場合は、高圧線の工事が不要でも個別計算になります。
九州電力の工事費負担金の目安
九州電力では発電出力の小数点第1位を四捨五入した値と単価をかけて計算します。
もっとも高い単価の場合で、次の金額が目安となります。
発電出力 | 工事費負担金(税込)の目安 |
---|---|
10kW | 135,000円 |
20kW | 270,000円 |
30kW | 405,000円 |
40kW | 540,000円 |
50kW | 675,000円 |
既設の引き込み線から分岐するだけで良い場合は、1件あたり2,052円です。
九州電力の工事費負担金を目安を知るための計算式は次の通りです。
工事費負担金額の目安 = 発電出力(kW) × 工事単価(円)
九州電力では、変圧器の工事まで単価が決められています。
以下の2つの場合では個別計算になります。
・電柱を建てる必要がある場合
・高圧線の工事が必要な場合
電柱を建てる場合は、高圧線の工事が不要でも個別計算になります。
3. 工事費負担金の注意点
この章では工事費負担金の注意点を記載します。
これから太陽光発電の申し込みをする方はぜひご覧ください。
3-1. 工事費負担金の振り込まないと売電開始ができない
電力会社が電線や売電メーターを取り付ける工事は、工事費負担金を振り込んだことが確認されてからの手配になります。
電線や売電メーターが取り付けられてからでないと、売電はできません。
太陽光発電の設置を決めたら、必ず支払いましょう。
3-2. 工事費負担金の振込みから実際の工事までは数ヶ月かかる
工事費負担金を振り込めば、すぐに電力会社が工事してくれるわけではありません。
特に電柱や変圧器(柱上トランス)の設置・交換が必要な場合、支払いから工事までに2、3ヶ月の時間がかかります。
できるだけ早く売電開始したければ、請求書が届き次第支払いましょう。
3-3. 工事費負担金の金額が変更される場合がある
ごく稀にですが、一度請求された工事費負担金の金額が変更される場合があります。
・設計通りに電線をつなげられないので、補強したり別の方法で電線をつなぐ場合
・近くで別の太陽光発電所ができるので、電柱や変圧器(柱上トランス)の費用を按分する場合
金額が上がる場合も下がる場合もあります。
なぜ変更になるのか、電力会社から事情を確認してから振り込みましょう。
3-4. 単価制の電力会社でも、単価表で計算した金額以上になる場合もある
単価表で一番高い金額で計算していても、それ以上に工事費負担金がかかる可能性もあります。
東京電力、関西電力、九州電力では、高圧線の工事が必要な場合は大規模工事として個別計算となります。
周りに電線がない場所で太陽光発電を設置する場合、高圧線や電柱の費用がかかるため単価表で計算した金額以上に必要となる可能性があります。
3-5. 工事費負担金の請求から1ヶ月以内に入金しないと接続契約取り消しの可能性がある
電力会社は、工事費負担金を請求してから1ヶ月以内に振り込みを確認できなかった場合、接続契約を取り消す権利を持っています。
これは、法律で電力会社に認められている権利です。
この権利がないと、設置を断念した太陽光発電など実際には稼働しない発電所のために電線の余力を確保し続けることになってしまいます。
2018年5月現在、接続契約を取り消したことがある、という電力会社もすでにあります。
ただし、事前に書面などで確認をとった上で、取り消したそうです。
3-6. 工事費負担金は償却資産にできる
工事費負担金は償却期間15年の繰延資産になります。
国税庁のホームページ内で明記されています。
国税庁ホームページ「太陽光発電設備の連系工事負担金の取扱いについて」
事業として太陽光発電を設置する場合、損金計算などに関わってくるので注意が必要です。
まとめ
工事費負担金は、売電するために必要な電線を繋ぐための部材と工事にかかる費用です。
売電するためには必ず支払う必要があります。
金額が確定するまでに時間がかかることから不安に思われることが多い工事費負担金ですが、一部の電力会社では目安となる単価表を公開しています。
そのおかげで、見積もり時点で工事費負担金を含めた収支計画を立てられるようになりました。
工事費負担金の金額不明で検討していた方も、目安の金額を含めて再計算してみてはいかがでしょうか。