ソーラーシェアリングを土地活用の選択肢に挙げているあなた。
ひょっとして「自分でもできそう」とか「意外と簡単にいけるかも」と思っていませんか?
ソラサポにも「農地転用ができないからソーラーシェアリングを検討している」「太陽光と農業の二重収益を実現したい」というお問い合わせをいただきます。
中には、農業を簡単に考えていたり、制度の厳しさをご理解されていない方もいらっしゃいます。
ソーラーシェアリングは、日本の食料自給率の向上や耕作放棄地の減少に役立つ素晴らしいものです。
しかし、実は甘い計画で失敗している方が多いのも事実です。
この記事では、ソーラーシェアリングで失敗する方が少しでも減ることを目的として、次の点について詳しく解説します。
・ソーラーシェアリングとはどういうものか
・業者が言いたがらないとても重要なデメリットやリスク
・はじめてのソーラーシェアリングで成功率をあげる簡単な方法
最後まで読んでいただければ、ソーラーシェアリングを成功させる「仕組み作り」の必要性をご理解いただけると思います。
「自分には無理かな…」と思う人もいるかもしれません。通常の太陽光発電と違って誰にでも運用が可能な事業ではありません。
投資先は太陽光発電に限ったものではありません。
ぜひ最後まで読んでいただき、最適な選択のご参考になれば幸いです。
1. ソーラーシェアリングとは
ソーラーシェアリングとは、田んぼや畑などの農地で、農業と発電事業を同時に行うことです。
農業を営みながら発電事業を行うので、別名として「営農型発電設備」「営農型太陽光発電」と呼ばれることもあります。
農業は、太陽光発電の架台の下の空間で行います。太陽光パネルは、藤棚のように地面から3mほどの高さに設置し、地面の農作物の生育に必要十分な日照が降り注ぐ(日照のシェアリング)ように隙間を開けて並べます。こちらの画像をご参照ください。
CHO研究所 長島彬様のソーラーシェアリング実証試験場(千葉県) 複数の農作物を育てている |
ソーラーシェアリングは、本来「恒久的な農地転用」が不可能な一種農地等でも条件を満たせば太陽光発電の設置が可能となるため、注目を集めています。
“本記事でのソーラーシェアリングの定義”
この記事での「ソーラーシェアリング」とは、「青地農地や一種農地等の太陽光発電事業のみでは恒久的な農地転用が不可能な場所」で農業と発電事業を同時に行うことを指します。
※宅地や雑種地でも、農作物を作りながら発電事業を行えば「ソーラーシェアリング」ですが、記事内での混同を避けるために、区別します。
1-1. 現在、ソーラーシェアリングが話題になっている理由
インターネットやチラシ等でソーラーシェアリングを紹介するものが多くなってきました。
その背景として、一般的な野立て太陽光発電の案件数減少が挙げられます。
すでに恒久的な農地転用が可能な農地の多くで太陽光発電が設置され、年々案件数が減少しています。
そこで太陽光発電関連企業が狙ったのが「ソーラーシェアリング市場」です。
青地農地や一種農地といった多くの農地では「太陽光発電単体の事業」での農地転用を認めていません。
しかし、ソーラーシェアリングで農業を営めば、一時転用という形であれ太陽光発電を設置することは可能です。
ソーラーシェアリングは、ほとんどの農地が設置できるので、制約が一気に少なくなります。
また、ソーラーシェアリングを扱っている太陽光関連企業は少ないので、相見積もりの相手も必然的に少なくなります。
そうなると、割高でも販売可能となり、業者は大きな利益を獲得することができるのです。
2. ソーラーシェアリング 3つのメリット
ソーラーシェアリングのメリットは大きく分けて3つあります。
ソーラーシェアリング 3つのメリット | |
---|---|
この章では、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
2-1. 太陽光発電と農業の二重収益構造
今までの農業収入に加えて、太陽光発電による売電収入でダブルの収益を見込むことができます。
太陽光発電の安定した収入で、余裕を持った営農が可能になるでしょう。
2-2. 農地でも太陽光発電が設置できる(地目の制約が少ない)
一般的な野立ての太陽光発電を農地で設置しようとすると「恒久的な農地転用」が必要となります。
農地転用が可能な農地は、農地全体の中でごく僅かです。
そのため、農地を持っていて太陽光発電をやりたくても、農地転用の許可を得られず設置不可となるケースが非常に多くあります。
しかし、ソーラーシェアリングであれば、上記のような土地でも「一時転用」という扱いで、設置が可能です。
そのため、農地であっても門前払いにならないため、場所の制約が少ないと言えます。
ちなみに、農林水産省の発表では、日本に約450万ヘクタールもの農地があります。
非常に大きな市場と言えるでしょう。
2-3. 農地転用するのは土地の一部分なので土地の固定資産税が高くならない
ソーラーシェアリングの場合、農地の全面転用をせず、支柱部分のみ一時転用という扱いになることはすでにお分かりいただいていると思います。
農地を普通の地目に転用する場合、固定資産税が大幅に上がります。その理由は、元の固定資産税がとても割安だからです。
事業をしていく上でこの固定資産税という出費が安いままであるのは非常にありがたいことです。
それでは、デメリットはどうでしょうか。
次章で詳しく紹介していきます。
3. ソーラーシェアリング 11のデメリット・リスク・問題点・課題
ソーラーシェアリングのデメリット・問題点・課題を記載します。
簡単に言ってしまうと、太陽光発電のメリットが「なくなる」・「不確かになる」ことが最大のデメリットと言えます。
太陽光発電のメリット | |
---|---|
それでは、重要なポイントをしっかり把握しておきましょう。
太陽光発電のリスクについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
3-1. 【制度】固定価格買取制度の適用外となる場合がある(一時転用リスク)
ソーラーシェアリングを行う場合、「恒久的な農地転用」ができる場所は別ですが、ほとんどが農地転用が不可能な土地で「一時転用許可」という扱いで発電事業を行います。
「一時転用許可」をまとめると次のような条件となります。
3-1-1. 一時転用は最長3年間の期間限定の許可
一時転用の許可は最長で3年間であり、期間満了後は再度許可の申請を行う必要があります。
その際に次のような場合は、営農の適切な継続が確保されていないと判断され、再許可が下りない可能性が非常に高いです。
・営農が行われていない場合
・農地における単収(面積当たりの収穫量)が、同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少している場合
・農作業に必要な機械等を効率的に利用することが困難であると認められる場合
農業が適切に行われていないと判断された場合、まずは改善を指導されます。
改善が見られなかった場合、速やかに撤去しなければなりません。
また、撤去する際は農業を営むことが可能な状態に原状回復する必要があります。
一定の条件を満たせば、架台部分の一時転用許可の期間を最長3年から最長10年に延長する、というものです。
しかし、10年になったからと言って売電中止のリスクは変わりません。
あくまでも一時転用許可の申請の回数が減って手間が少なくなっただけです。
農林水産省の発表を詳しく記載した記事を公開しましたのでぜひご覧ください。
3-1-2. 毎年、農作物の収穫状況報告が必要になる
ソーラーシェアリングを運用する場合、毎年、収穫状況の報告をする必要があります。
・営農型発電設備の下部の農地における農作物の状況報告
出さない場合や基準に満たない場合の最悪、撤去命令という措置があります。
報告には「報告内容について必要な知見を有する者の確認を受けること。」という条件が付いています。
3-1-3. 農業委員会との付き合い(属人的な対応となるケース)
基本的に一時転用等の農地転用は、各市町村の「農業委員会」が窓口となります。
※農業委員会が設置されていない市町村もあります。
各市町村の農業委員会によって特色が違います。
ソーラーシェアリングに対して、農業委員会の考え方が異なる場合があります。
厳しい意見を言う農業委員会の管轄内でやろうとすると、申請時に細かい説明が必要だったり、1年毎の経過報告時や3年毎の更新時に色々と大変な想いをするかもしれません。
しかし、農業委員会は国民の食料を生産する大切な農地を守る目的で農地売買や農地転用に際し、農地の無秩序な開発を監視・抑止する役目を担っているのでソーラーシェアリングに対しても厳正に審査・対処することが本来あるべき姿と言えるでしょう。
3-2. 【運用】農作物は変動価格(売値は一定ではない)
一般的な太陽光発電は「期間・買取価格」が固定されていますが、農業は固定されていません。
農作物は取り巻く環境によって大きく金額が変わります。
天候、日照量、外国産作物の脅威等の様々な要因があります。
3-3. 【制度】人手不足による雇用問題と事業の継続性
ソーラーシェアリングで一番の課題は継続することの難しさでしょう。
・農業を一定水準の品質・収穫量で継続して行うこと
・自身で農業ができなくなった場合、担い手がいるかどうか
・この先、「一時転用」の基準が一定という保証が無い
このような継続性に関わるリスクがあります。
3-4. 【運用】20年間は販路を開拓、確保し続ける必要がある
太陽光発電は、20年間、固定価格で電気を買い取ってもらえますが、営農は買取期間、買取価格の保証はありません。
そのため、農作物の販売先の確保は必須です。
20年間という長い間、ずっと同じ卸先が買い取ってくれるとは限りません。
また、少しでも高く販売するためにも、販路の開拓が必要になります。
3-5. 【運用】太陽光の設備を中古で販売したくても買い手が限定される
ソーラーシェアリングの設備を中古で販売するのは非常に困難です。
特殊なパネルや架台を使用していることに加えて、部材だけの販売になると一気に市場での価値は下がります。
発電所として売買する場合も、営農部分をクリアできる買い手限定となってしまいます。
そのため、部材としても発電所としても販売が困難と言えるでしょう。
3-6. 【運用】相続人(予定)と共有しておくべきノウハウが多すぎる
20年間という長い期間を考えると、自分が動けなくなる可能性も考えなければなりません。
あなたが倒れてしまった時に備えて、相続人(予定)の方にも太陽光発電と農業、両方のノウハウに加えてソーラーシェアリングならではのノウハウを身につけてもらう必要があります。
太陽光発電のノウハウ:発電量の見方、相続時の手続き、トラブル時の対応方法など
農業のノウハウ:植え付けの時期、育て方、雑草の世話、収穫、販売ルートなど
ソーラーシェアリングのノウハウ:適した作物の知識、年毎の手続き、一時転用の手続きなど
ノウハウを身につけた上で、農業を続けてもらう必要があります。
ノウハウを伝えられない、相続人(予定)が仕事の都合上農業を続けられない場合には、農業従事者の雇用または委託先を見つけられないと発電事業の廃止が避けられません。
3-7. 【資金】2つの理由で金融機関の融資がおりにくい
一般的な野立て太陽光発電に比べて、ソーラーシェアリングの融資はおりにくいです。
その理由は「一時転用」と「太陽光発電の利回りの低さ」にあります。
3-7-1. 一時転用だから融資がおりにくい
太陽光発電は固定価格買取制度という国の制度を利用して「期間・価格」が固定され、20年先(10kW以上の場合)まで安定した収益が見込めます。
しかし、ソーラーシェアリングは農地転用を「一時転用」として行い、3年ごとの更新があるので、期間が3年以上保証されていません。
もし3年後に更新の許可が得られなかった場合、事業廃止になりますので、金融機関は資金の回収が難しくなります。そのため、融資に消極的になるということです。
しかし、もともと農家の方が今後農業の継続性(次世代の担い手等)に信頼があると判断すれば融資を行なっている金融機関もあります。
3-7-2. 太陽光発電の利回りが低くなるから融資がおりにくい
ソーラーシェアリングの太陽光発電システムは、通常の地上設置型太陽光発電よりも割高です。
【資材が高い】:日光を地面に届かせる必要があるので、架台に対してパネルの占有面積が少ない
【工事が高い】:設置に多くの手間暇がかかる(=人工が多い)
架台や工事費用が増えたところで、発電量は変わりませんので利回りが低くなるということです。
特に、初期投資の回収までに15年以上かかると融資は難しくなるでしょう。
3-8. 【運用】太陽光発電部分の利回りが低い 初期費用と維持管理費用が割高
3-7-2. でご説明した通り、ソーラーシェアリングは一般的な太陽光発電と比べて初期費用が割高です。
一部の維持管理費用は初期費用と比例するため、こちらも割高になります。
その結果、太陽光発電部分の利回りが低くなります。
【メンテナンス費用】:ソーラーシェアリングの場合、太陽光パネルの洗浄や赤外線検査などが必要になった場合、「パネルの場所が地上から高い」「パネルが離れている」ので作業効率が下がります。そのためメンテナンス費用も多少高くなります。
3-9. 【運用】架台があるので農業がやりにくくなる
ソーラーシェアリングでは、架台の基礎があるので、作業性が悪くなります。
耕運機やトラクターを使う場合、旋回時などに架台を傷つける恐れがありますので、気を配って作業する必要があります。
3-10. 【運用】農家の方でも育てる作物のノウハウが必要
農業経験がない方が、準備不足のまま農業へ参入することがありますが、大きなリスクを抱えることになります。
なぜなら、消費者がお金を払って手に入れる「商品」としての農作物生産、販売ルートの確保、農業にかかる手間等のノウハウがは簡単に手に入るものではないからです。
実は、これは農家さんであっても同じです。
ソーラーシェアリングで生産する農作物は、何でも良いというわけではありません。その農作物ソーラーシェアリングを行った前例や実績が求められる場合が多く、自分に優位性がある作物を選べるとは限らないためです。
いざ始めても農作物の収穫量が基準に満たないと、一時転用の3年に一度の更新時に再許可を得られる保証がないという点も重要なポイントです。
3-11. 【運用】農業と営農の実績が豊富な太陽光発電業者はわずか
ソーラーシェアリングで使用する部材は、一般的な太陽光発電と大きく変わりません。
変わる部材としては、基礎部分の「架台」とソーラーシェアリング用のパネル(一般的なパネルを使用する場合もあります)ですが、現在では太陽光発電の業者であれば非常に簡単に仕入れることができます。
そのため、販売・設置までは業者であれば簡単にできますが、その後の運用ノウハウが無い業者がたくさん居ます。長期稼動の実績を持つ業者はごくわずかです。
ソーラーシェアリングのノウハウはもちろんのこと、農業のノウハウが無い業者でソーラーシェアリングを設置すると結果は目に見えています。
そのため、業者選定には非常に重点を置く必要があります。
4. 業者選びのポイント
4-1. ソーラーシェアリングの実績が豊富か
ソーラーシェアリングの実績や農業のノウハウが無い業者が無責任にシステムを提案する場合があります。
その場合は「売ったらおしまい」スタイルの業者と疑いましょう。
実績があっても、設置した顧客がどのような状態か把握していないケースもあります。
ソーラーシェアリングは運用後のサポートも含めた業者選びが必須です。
常に設置した顧客の状況を把握して、サポートできる能力があるか判断するためには、「設置したお客さんの状況はどうですか?」と聞いて見ましょう。
「順調です!」と言うのであれば、順調である根拠を示してもらいましょう。
具体的には、上記の「設置した顧客がどのような状態か把握しているか」を聞いてみましょう。
4-2. 作物の収穫計画に合理的な根拠はあるか
ソーラーシェアリングの提案書には、太陽光発電の事業シミュレーションに加え、農作物の収穫シミュレーションが付いています。
よくあるパターンとして農作物の収穫シミュレーションが非常に楽観的な場合があります。
具体的には面積あたりの収穫量が平均収穫量を遥かに超えている、相場以上の金額で販売している、といった非現実的なシミュレーションなどです。
農作物の平均収穫量を調べたい場合は「◯◯ 平均収穫量」とインターネットで検索してみましょう。
農作物の相場を見たい場合は、お近くの農協さん等に問い合わせるか、インターネットで販売されている作物の販売価格を調べましょう。
しかし、流通している金額で売れるとは限りませんので注意してください。
そもそも、太陽光発電のよりも高い利益率や年間利回りが確保できるのであれば、太陽光発電のシステム代をその農作物に投資した方が経済的なメリットが大きくなり合理的です。(これは当たり前の話ですが、私たちに寄せられるご相談にはこのような矛盾したシミュレーションが非常に多く含まれています。)
4-3. 毎年の年度報告、3年に一度の更新の実績はあるか。
毎年の年度報告、3年に一度の更新の実績があるか確認しましょう。
どんなことしたのか、どういうことに困ったのかを聞いて見ましょう。
4-4. 作物の販売チャネルを持っているか。
あなたがソーラーシェアリングを始める前に「販売チャネル」を確立する必要があります。
作った作物をどのような価格で、どこに販売するかを予め決めておく必要があります。
また、実績が豊富な業者は独自の販売網を持っていることがあります。
その販売網を生かし、農作物を販売するのも一つの手です。
業者に販売チャネルがない場合は、事前にご自身で探しておく必要があります。
4-5. 運用後のサポート体制はあるのか
一番怖いのが「売っておしまい」の業者です。
ソーラーシェアリングは業者のサポートが必要な部分もありますので、設置後にどのようなサポート体制があるのかを確認しましょう。
担当の営業マンの「サポートします!」という口約束のレベルではなく、サポートプラン等を聞いてみましょう。
4-6. 割高な見積もりではないか
3-8.通常の太陽光に比べて費用が割高でも記載しましたが、システムの価格を割高に出す業者が多いです。
地元でソーラーシェアリングをやっている業者が少ない場合は、他県の業者にざっくりとした相場を電話で聞いてみるのも一つの手です。
業者数が少ないので、どうしても割高に出す業者がいますのでご注意ください。
4-7. 実際に設置した現場を見学する
業者を選ぶ際には、必ず現場を見学してください。
実際にどのようなものが作られているのか、作物の生育状況等の現実を見ておくと設置後のギャップが少なくなります。
また、その現場の収支状況を教えてもらってください。
現場を見せることができる=そのお客様から許可を得ているということになります。
設置後に満足していない場合は、見学許可はもらえませんので、見学できる場所が多い業者ほどお客様の満足度が高いと言えるのではないでしょうか。
5. ソーラーシェアリングを機に農業を始める方へ
ソーラーシェアリングを機に農業を始める方への章です。
5-1. 太陽光を設置したいが為に農業を始めようとしていませんか?
農業の人手不足の中、農業人口が増えることは素晴らしいことだと思います。
しかし、太陽光発電をする為に農業を始めようとなると話は別です。
通常、ソーラーシェアリングは、農家の方が農業に加えて安定した売電収入を実現するために提案されます。
農業のノウハウが無い状態からいきなりソーラーシェアリングをしたところで、農業部分が失敗してしまう可能性が非常に高いです。
農業のノウハウが無いあなたでも、問題なく運用できる「仕組み作り」を実現しなければいけません。
5-2. 長期間(20年以上)農業を行う体制と仕組みはありますか?
20年間という非常に長い長期間の中で、農業を続けていく自信はありますか?
あなたも年を取ります。
体もついて行かなくなるかもしれません。
また、あなたが農業をすることができなくなってしまった時に、代わりに農業が継続される仕組みにすることができますか?
あなたの子供は農業を代わりにやってくれますか?
人に頼む場合も無償でやってもらえますか?
人件費が高騰していく中、慢性的な人手不足の農業で、人を雇うことができますか?
5-3. ソーラーシェアリングはあなたにとって本当の解決策になっていますか?
私たちはソーラーシェアリングのお問い合わせがあるとこのような質問をします。
なぜなら、ソーラーシェアリングは解決策として採りうる手段・方法の一つですが、ソーラーシェアリングをやるために辻褄を合わせるのは本末転倒だからです。
5-3-1. 本末転倒で失敗するパターン
本末転倒の例
そして、売るものがない太陽光業者にとっての解決策としてのソーラーシェアリングも多くあります。
「あなたにとっての解決策」とはなり得ません。
上の図のように、ただ単に売上を増やす商材としてのソーラーシェアリングの提案で、あなたの抱えるリスクに関心がない業者や営業マンに当たれば下の図のような結果になる可能性が高いでしょう。
↓
これでは、あなたが思い描いていた営農型太陽光発電の最大のメリットである二重の収益構造は崩れるばかりか、損失が残ってしまいます。
5-3-2. ソーラーシェアリングで問題が解決するパターン
一方で、あなたの問題点を解決するために、最適な方法がたまたま「ソーラーシェアリング」だった場合を考えてみましょう。
例えば、今まで農業を営んできて、今後(20年以上)も農業ができる体制があり、農業単体の収益に加えて更に収益を得たいという目的であれば、成功に近いと言えるでしょう。
本業(農業)+アルファとしてのソーラーシェアリング
あなたの問題点を解決する方法がソーラーシェアリングである場合、太陽光発電の収入がプラスされるので、あなたが受けられる利益も必然的に多くなるはずです。
↓
すでに農業が順調であれば、一時転用も怖くないでしょう。しかし、遮光率の影響が収穫量や品質にどうのように影響するかは客観的なデータがまだまだ乏しいので油断は禁物です。
6. それでもソーラーシェアリングをやりたい方へ 成功率が上がる解決策の4手順
それでもソーラーシェアリングをやりたい方への提案として、成功率が上がる4つのステップをご提案します。
「まずソーラーシェアリングを検討している場所で農業だけをやってみる」というのはいかがでしょうか。
この提案のメリット | ・農業の成功率が上がる(失敗率が下がる) |
---|---|
・太陽光発電の利回りが上がる(3年前の売電単価で太陽光発電を低コストで稼働できる) | |
・デメリットがない |
まずはこちらの図をご覧ください。
全体的なイメージが掴めたでしょうか?
それでは、STEP1から4まで順番に解説していきます。
STEP.1 売電単価の確保をする
改正FIT法によって太陽光発電の売電単価は、確保してから発電開始するまでの猶予期間が3年(10kW以上)あります。
これを「運転開始期限」と言います。
つまり、現在の制度では、2017年度の売電単価21円/kWhを確保しておけば
3年後に運転開始しても売電単価21円(税別)/kWhで20年間の売電が可能です。
このように、売電単価を確保しておけば、3年間の運転開始期限は自由に使うことができます。
次のステップ2では、この時間を実際の農業のために使います。
STEP.2 農業・営農の準備(作物の選定・販路の開拓・生育)とテスト
3年間の運転開始期限を有効活用するために、実際に農業を行なってみましょう。
太陽光発電の計画や資材の調達には3ヶ月ほどかかりますので、2年から2年半までを目安に営農の実体験をされると良いでしょう。
また、このステップで、あなたにソーラーシェアリングを提案した業者の発言や計画の信ぴょう性が明らかになるでしょう。
このステップで達成・確認するべき項目はこちらです。
・農作物の選定 | :何を育てるか。(単一か複数か) |
---|---|
・農作物の育成 | :実際に育てた場合の労力や経験値の獲得。 |
・販路の開拓 | :誰が・いつ・いくらで・どのくらい買ってくれるのか。 |
・農作物の販売 | :加工は必要か。梱包は。配送方法は。顧客はリピーターになるか。 |
・営農のためのコストの把握 | :人件費。肥料。器具。その他費用の把握。 |
太陽光発電の場合は、周辺の過去20−30年分の気象データ、機器の構成、設置角度と方位、周辺の遮光物を調べれば、かなり確度の高い事業シミュレーションを出すことができます。
・売電収入=発電量×固定価格(売電単価)
一方で、農作物の場合は、天候の影響もありますが、価格は需給バランスや品質によって当然変動します。
・農業収入=出荷量×変動価格
出荷量は品質にも影響されますので、収穫量と等しくなることはありません。そして、何より相場は変動します。他にも色々とありますが、不確定要素が多いので、実体験で得た手間暇が何よりの知識となるでしょう。
STEP.3 ソーラーシェアリング実行の判断材料を整理する
ソーラーシェアリング実行の判断基準を整理しましょう。
色々な要素があると思いますが、客観的な数字を基準とすることをオススメします。
営農型をやってみたいからやる!というような「手段の目的化」にはお気をつけください。
判断基準 | ・太陽光発電の利回り 何%ならやるかやらないか。 |
---|---|
・農業の利回り(実体験を元にしたもの) 何%ならやるかやらないか。 | |
・農業の持続性 担い手は確保できているか。 | |
・その他 |
太陽光発電の利回りは、売電単価の確保時から向上しているはずです。
なぜなら、売電単価の確保から2年ほど経過している頃で、設置コストが下がっている可能性が高いからです。
そのため、必ず太陽光発電システムの再見積もりを取りましょう。
ほぼ間違いなく安くなるでしょう。
農業の利回りは、実体験を元にして、面積あたりの収入や、販路の継続性を厳しく考慮して試算しましょう。
また、農業に割いた労力と収入のバランスについて、相続人(予定)が納得できるかどうかも考えておきましょう。
STEP.4 実行の判断をする 売電開始 or 中止
1年、2年農業をやってみて、あなたが想像していた農業と実際の農業にどれほどギャップが生じるかはわかりません。ひょっとしたら予想以上にうまくいって、太陽光発電の利回りを大きく越えればそもそも太陽光発電に投資するより農業に注力した方が良いかもしれません。
いずれにせよ、農業のテスト期間が終わりに近づけばどれかを選ぶことになります。
パターン❶:どちらも実行する
パターン❷:農業だけ続ける
パターン❸:どちらもやめる
いずれにせよ、成功率は上昇し失敗率は下降しますので、どうしてもソーラーシェアリングをやりたいけれど不安が残るという方は、これをやらない手はありません。
コンサルタントや業者としても、あなたのリスクが格段に下がる方法なので反対しないでしょう。もし反対するとすれば、目先の契約と売上が欲しい場合かもしれません。
7. ソーラーシェアリングQ&A
ソーラーシェアリングの場合は、フェンスや防草シートを設置しない場合が多いため、太陽光発電システムの費用と工事費用で構成される場合が多くなります。
しかし、地方自治体によっては交付している場合もありますので、設置予定場所を管轄する役場に確認してみましょう。
一時転用扱いとなるか、恒久転用となるかは自治体によって異なる可能性があります。必ず事前確認が必要です。
恒久的な農地転用となる場合、地目が雑種地等に変更され、土地の固定資産税は上がってしまいます。
一時転用とは異なり、3年に一度の更新や年度報告が不要になりますので、20年間太陽光発電事業を行えることが約束されています。
もし、農業をやめたとしても、罰則はありません。
そのため、一般的なソーラーシェアリング特有のリスクを回避できますので、検討することをおすすめします。
株式会社アクティブエナジー
行政担当向け:営農型発電設備の実務用Q&A(pdfファイル ※リンク切れ)
設置者向け :営農型発電設備の実務用Q&A(pdfファイル ※リンク切れ)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ソーラーシェアリング導入前に注意するべき点がある程度明確になったのではないでしょうか?
これだけ導入リスクがあるにも関わらず、メリットしか言わない業者もあります。
ソーラーシェアリングも太陽光発電も農業も、スタートしてからが本番ですのでご注意ください。
20年間ずっと付き合っていける業者に出会うことができれば成功率が上がるでしょう。
場合によっては「やらない」という判断も賢明です。
農地以外でも設置を諦めた土地があればお気軽にご相談ください。