今年の太陽光発電の売電収入はどのぐらいですか?
雑所得が20万円を超えると確定申告が必要になるので、初めての確定申告に頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
太陽光発電もなかなかややこしいルールが多くありますが、税金はもっとややこしくてよくわからないですよね。
しかも、納税がおくれると加算金や延滞金が発生し、税金が高くなってしまいます。
この記事には、次の3つのことが具体例とともに解説されています。
- 償却資産税とはどんな税金なのか
- 太陽光発電と関連設備の償却資産には何があるか
- 償却資産税が何円ぐらいかかるのか
最後まで読んで、あなたに該当するものを把握してください。
“注意事項”
- 本記事の内容は一般的なものです。実際の税に関しては、管轄の税務署またはお近くの税理士までご相談ください。
1. 償却資産税とは
1-1. 償却資産と償却資産税
- 償却資産とは
- 償却資産とは、税法上、固定資産の中で事業に使用するものです。時間の経過によって価値が目減りしていくものが該当します。固定資産には、償却資産の他に土地や建物などがあります。
- 太陽光発電システムは、発電事業に用するものなので償却資産となります。
償却資産には、償却資産税(固定資産税の一種)が課されます。
1-2. 賦課期日(1月1日)と申告先(市町村)
・賦課期日は毎年1月1日です。法人でも個人でも所有している償却資産を1月31日までに申告する必要があります。
・申告先は市町村ですが、国税の減価償却費と照会をするため、確定申告終了後に市町村から連絡がくる場合があります。
1-3. 税率と課税標準額
課税標準額が150万円以上のものが対象となり、税率は1.4%です。
資産は「減価償却」(少しずつ価値が低下)して、毎年、課税標準額が下がります。
(価値が低下するのは税務上の話であり、発電量など性能が低下することではありません)
次の章では、計算方法について触れていきます。
2. 減価償却とは
- 減価償却とは
- 減価償却とは、太陽光発電や製造用の機械などの事業用に購入した資産を購入時の一度ではなく、毎年少しずつ費用として分けていくことです。(毎年、価値を減少させていくこと)
- 減価償却費とは
- 減価償却費とは、減価償却によってその減少した価値を一定の計算方法で算出したものです。
減価償却費の算出には法定耐用年数が使用されます。例えば、耐用年数が10年と決められているものを勝手に20年分で割ったり5年分で割ったりすることはできません。
法定耐用年数は「減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。
(減価償却資産の耐用年数表 PDFファイル 東京都主税局ホームページより)
太陽光発電に関する主な償却資産については、次章の「3.太陽光発電に関する償却資産」で具体例を紹介します。
2-1. 償却資産費の計算方法〜定額法と定率法〜
減価償却の計算方法は「定額法」と「定率法」の二種類があります。
- 定額法の特徴
- ・毎年、同じ金額が減価償却費として費用計上されます。
・取得価額に定額法の償却率をかけて費用を求めます。
・個人事業の方は通常、定額法で 計算します。
- 定率法の特徴
- ・定額法と比べると初年度の減価償却費が多くなり、年々償却額が 減少していきます。(合計は変わりません)
・法人は通常、定率法で計算します。
・償却費は、年々減っていくので、「償却保証額」未満になった年以後は、定額法のように毎年同額となります。
定額法と定率法は税務署への届出を条件として選択することできます。
減価償却費は売電収入に対する費用として計上することができますので、どちらの計算方法が適用に なっているか確認した上で計算することが大切です。
法人、個人事業主向けに、減価償却を初年度に多めに行う国税の優遇税制もあります。(実施期間や対象設備が限られますのでご注意ください)
2-2. 償却資産税の計算方法
償却資産税の課税対象になる金額も、減価償却費と同じように少しずつ価値が少なくなります。
同じ 「減価償却」という言葉ですが、混同しないように注意してください。
償却資産税は、1月末までに申告のあった資産が対象になります。
税額は課税標準額の1.4%で、課税標準額が150万円未満になれば課税されません。
150万円未満であっても、申告が必要であったり、不要であったりします。
詳しくは申告先である各市町村にご確認ください。
遠隔地で太陽光発電を設置している場合、設備の所在地が償却資産税の申告先になります。
所得税( 通常、納税者の住所地等の税務署が管轄になります)とは申告先が異なりますのでご注意ください。
3. 太陽光発電に関する償却資産と耐用年数の具体例
太陽光発電設備以外も、償却資産の対象になるものがあります。
「(減価償却資産の耐用年数表 PDFファイル 東京都主税局ホームページより)」に記載されている年数に従って紹介します。
3-1. 防草シート(雑草対策)・耐用年数2年
太陽光発電所の雑草対策で敷設する防草シートは、法定耐用年数2年です。
減価償却資産の耐用年数表の15ページに記載されている、「器具及び 備品」のうち、「11 前掲以外のもの」の「シート」に該当します。
ただし、グランドカバープランツや砕石なども導入する場合は、一体として「雑草対策」という機能を果たす ものとみなされ、償却期間が変わることがあります。
3-2. 砕石(雑草対策)・耐用年数15年
防草シートの上に敷設する等、雑草対策に使う砕石は、法定耐用年数15年です。
減価償却資産の耐用年数表の7ページに記載されている「構築物」のうち「舗装道路及び舗装路面」の「石敷き」に該当します。
3-3. クラピア等のグラウンドカバープランツ(雑草対策)・耐用年数15年
クラピア、クローバー等のグランドカバープランツは、法定耐用年数15年です。
減価償却資産の耐用年数表の14ページに記載され ている「器具及び備品」のうち「10 生物」の「植物 その他のもの」に該当します。
購入金額によっては、購入年で全額経費計上が可能です。
3-4. アスファルト舗装・耐用年数10年
防草対策や地面の造成で行うアスファルト舗装は、法定耐用年数10年です。
減価償却資産の耐用年数表の7ページに記載されている「構築物」のうち「舗装道路及び舗装路面」の「アスファルト敷き」に該当します。
3-5. 発電量の遠隔監視装置(エコめがねなど)・耐用年数5年
エコめがね等の遠隔監視装置は、法定耐用年数5年です。
減価償却資産の耐用年数表の13ページに記載されている「機器及び備品」の 「4 光学機器及び写真製作機器」のうち「カメラ」に該当します。(一般的な発電の遠隔監視装置にカメラの機能はありません)
3-6. 防犯対策(侵入防止用フェンス)・耐用年数10年
侵入防止用のフェンスは、法定耐用年数10年です。
減価償却資産の耐用年数表8ページに記載されている「構築物」のうち、「金属製のもの(前掲のものを除く。)」の「へい」に該当します。
4. 雑草対策に防草シート その場合の償却額を具体例で考える
仮に、48万円かけて雑草対策のシートを敷設するとして、敷設完了から確定申告までの期間が8カ月あるとします。
そうすると、防草シートの耐用年数は2年(24ヶ月)なので定額法での償却額はこのようになります。
480,000(円)÷ 24(ヶ月) = 20,000円
20,000(円)× 8(ヶ月)= 160,000円
つまり、この場合はその年の確定申告で160,000円を経費として計算できることになりますね。
48万円だと、デュポン社のザバーン240という非常に強力な防草シートが工事込みで500から600平米分敷設できます。
(目安として、太陽光パネル容量で40kWから50kWほど)
まとめ
いかがでしたか?
太陽光発電に関する税金というと、売電収入にかかる所得税ばかり気にしてしまいがちです。
しかし、償却資産税の存在を説明しない(知らない)販売業者もいるため、加算金、延滞金が発生し余分に支払いをしなくてはいけなくなったケースもあります。
改正FIT法の施行で、あなたも雑草対策やフェンスの設置など、後から追加するかもしれません。
その際には、もちろん追加投資として減価償却が可能です。
もし、あなたのお知り合いが太陽光発電の購入をご検討されているようでしたら、ぜひ税金のことを教えてあげてください。
きちんと制度を理解して、間違いのないようにしないと思わぬ出費が発生することになるからです。
税金の内容や対象など詳細は、地域によって微妙に取り扱いが異なるので必ず管轄の税務署や市町村の税務課、税理士にご相談ください。