もし、あなたの知らない間に本来得ることができた売電収入が減ってしまうとしたら、どう思いますか?
絶対にイヤですよね。
太陽光発電の抑制は、まさにあなたの知らぬ間に「売電ができない」状態をつくってしまいます。
この抑制には、大きく分けて電圧上昇抑制・温度上昇抑制の2種類があります。
発生原因と解決策を記載しておりますので、ぜひお読みください。
※電力会社による出力制御(力率調整)を知りたくてこの記事に辿り着いた方へ
この記事には電力会社による出力制御(力率調整)は、性質が異なるため記載しておりません。
電圧上昇抑制・温度上昇抑制も太陽光発電にとって非常に重要なポイントですのでぜひお読みください。
1. 電圧抑制
- 電圧抑制とは
- 電圧抑制とは、パワーコンディショナの自動保護機能の一つです。
【電力会社の電線内の電圧】が何らかの理由で高くなりすぎたときに、電力網を守るため送電を停止する機能です。
電気は電圧が高いところから低いところに動きますので、【太陽光発電設備の電圧 < 電線の電圧】となると「売電できない(売電量が減る)状態」となります。
1-1. 電圧抑制の発生原因
まず、太陽光発電設備が売電をするためには、電線内に電気を送る必要があります。
電気を電線に送る場合、発電所の電圧>電線内の電圧という状態ではないと、電気は送れません。
つまり、売電できない状態ということです。
電線内は基本的に100Vにすることを目指しておりますが実際は「95Vから107V」の間で変動しています。
また、一定期間であれば107Vを超えても許容範囲とされております。
一方で、太陽光発電システムの電圧はほとんどの場合、パワコンにより107Vで設定されています。
この数値は、電力会社の許可を得ずに変更することはできません。
電線内が107Vに収まっている間は問題なく売電することができますが、一時的に107Vより上昇してしまった場合に電圧抑制が発生しますので、その間は売電することができません。
107Vより上昇してしまう例としては、近隣に工場や大きな施設がある場合、普段から電圧は高めに設定されていますが、その施設が昼休みや休日になった場合、電線内は107V以上になってしまうことがあります。
そのため、電圧抑制は工場や商業施設の近くで発生する事例が多くあります。
1-2. グラフで見る電圧抑制の【対策前・対策後】
野立て太陽光発電(低圧70kW)のお客様で、設置後すぐに抑制の傾向が見られました。
※こちらのお客様は近隣に工場や商業施設等はありませんが、電圧抑制が発生してしまいました。
快晴の日であれば、グラフは南中時刻は頂点にした綺麗な山型になるはずです。
しかし、電圧抑制がかかると「図1」のように稼ぎどきの南中時刻がググっと凹むような不自然な発電量となります。
発電のグラフを数日チェックして見て改善されなかったため、現地でパワコンを確認したところ電圧抑制の履歴が確認できました。
その後、すぐに電力会社に連絡を取り、パワコンの整定値の変更許可をもらいました。
整定値の変更後は、電圧抑制は大きく改善され、順調な発電が続いています。
1-3. 電圧抑制を放置すると売電収入が減る
電圧抑制を放っておくと、売電収入が減ってしまいます。
電圧抑制を完全に無くすことはできませんが、極端に多く発生している場合は、改善できるかもしれません。
10年、20年という長期発電事業のため、積み重なれば大きな損失となります。
パネルが割れていたり、パワコンが壊れているわけではないので、発電量の見える化(エコめがね等の発電監視装置)を行っていないと気がつきにくい損失原因です。知らぬが仏になっている方も多いのではないでしょうか?
損(本来得られた利益の取りこぼし)を避けるためにも、早めの対策が必要です。
1-4. 電圧抑制の対策
もし、モニターやパワコンで抑制がかかっていることがわかれば、販売会社に相談をしましょう。
万が一、販売会社が倒産していた場合には、お客様自身で電力会社に問い合わせることも可能ですが、慣れた業者にご相談されることをおすすめいたします。
注意していただきたい点は、抑制は必ず改善するわけではありません。
抑制がかかっていても、パワコンの整定値の変更を許可されない場合があります。
しかし、1日あたり少なくても、10年、20年と経過するとその差は大きくなりますので1度モニター等で確認してみてはいかがでしょうか。
2. 温度抑制
- 温度抑制とは
- 温度抑制とは、パワーコンディショナの自動保護機能の一つです。
- この保護機能は、故障の原因となるパワコン内の温度が上がりすぎた時に作動します。
※温度抑制の発生条件は、使用しているパワーコンディショナによっても異なります。
パワコンの内部温度が一定以上に上昇すると、徐々に温度抑制が発生し、最終的には停止をします。
パワコン内の温度が下がれば、再起動をします。
温度抑制が発生している間は、「発電ロス」となってしまいます。
2-1. 温度抑制の発生原因
温度抑制の発生原因は以下のようなものがあります。
- パワーコンディショナに直射日光が当たっている
- 高温になる密閉空間に設置している
- 冷却ファンが停止している
- 排気フィルターが詰まっている
つまり、温度が上がりやすい(または温度が下がりにくい)状態で発生します。
ーパワコンの不適切な設置事例ー | |
左の写真のようなパワコンの設置場所では、直射日光が当たり続けたり、メーカーの設置基準を満たさないため、温度抑制が発生する可能性が非常に高くなります。 また、屋外仕様のパワコンといえども雨や雪に直接さらされては水分が内部に侵入して故障の発生率も高まります。このような事実を知らない販売店・設置業者がいる、ということですのでお気をつけください。(見積書だけでは気づけない部分です。) |
2-2. 温度抑制を放置すると発電量が減るだけでなく故障の原因になる
温度抑制が発生すると、売電できない状態となり売電収入が減ってしまいます。
また、パワコンは精密機械なので高温の状態が続くと故障の原因となります。
そのため、早急に対処する必要があります。
- 売電収入が減る
- パワコンの故障の原因となる
2-3. 温度抑制の対策
日常点検や定期点検で確認して、パワーコンディショナの状態を確認しましょう。
万が一、直射日光が当たる位置に設置しているのであれば、移設を検討する必要があります。
砂埃や花粉、黄砂等が多い環境下では、フィルターが詰まる可能性が高くなりますので、そのような場所に設置されている場合には、定期的に専門業者へ依頼をしましょう。
これから設置を検討されている方は、そもそものパワコン設置位置にも気を配って、不要な温度上昇を回避しましょう。
性質上、パワコンは運転時に発熱しますので基本的には涼しい場所に設置するのが大前提です。
また、パワコンを複数台設置する場合、それぞれのパワコンの周囲に放熱用の離隔距離が必要です。よくわかってない設置業者もいますのでお気をつけください。
3. 温度抑制|売れ筋パワーコンディショナメーカー8社の見解
人気パワコンメーカー8社に温度抑制についての見解を伺いました。
パワコンメーカーが語る温度上昇抑制の発生原因とその対策とは?
Q. パワコンの「温度上昇抑制」機能について伺います。
温度上昇抑制の発生原因と対策法を教えてください。
オムロンの回答
回答者:オムロン(株) 環境事業本部 お問い合わせ窓口 外温度が高い場合など、パワーコンディショナ本体の温度が上がっているときは温度上昇抑制機能が働き、発電量が抑制されます。 |
田淵電機の回答
回答者:田淵電機コールセンター |
SMAの回答
回答者:SMAジャパン セールス |
日立の回答
回答者:日立アプライアンス 発電中パワーコンディショナの内部温度が高くなると、機器保護のため発電出力を一時的に抑制いたします。 |
IDECの回答
回答者:IDECシステム&コントロールズ株式会社 環境エネルギー事業統括部 スマートエネルギー事業部 パワーコンディショナ内部の温度が上昇し、温度抑制値に達すると、温度上昇抑制機能が動作します。 |
デルタ電子の回答
回答者:リニューアブルエナジー・ソリューション事業部 カスタマーサービスチーム 三相機種の場合、温度上昇抑制の原因について、 |
山洋電気の回答
回答者:山洋電気株式会社 名古屋支店 営業第一課 【温度上昇抑制について】 |
新電元の回答
回答者:新電元工業株式会社 販売推進部 お問い合わせいただきましたパワーコンディショナには「温度上昇抑制」との表現がないため、「周囲温度異常」、「温度制限動作中」のいずれかと思いますので、これでご回答いたします。 |
まとめ
【電圧抑制】は、どの場所でも発生する可能性があります。抑制中は売電ができないため、抑制がかかるごとに損失が発生してしまいます。
損をしないためにも、抑制履歴がわかるパワーコンディショナやモニターを使用されている方は定期的にチェックをすることをおすすめします。
【温度抑制】は、パワコンの設置場所を間違えた場合によく発生します。
メーカーの施工基準に合わせて施工をする必要がありますので、移設等の対処をしましょう。
また、適切な設置方法をしても、メンテナンスを一切していない場合には発生する可能性があります。
太陽光発電は決してメンテナンスフリーではありません。
定期的なメンテナンスをすることで、10年、20年の発電事業を安全・安心に行うことができます。