2018年8月10日(金)付で、中部電力から工事費負担金の運用ルールについて重大な発表がありました。
太陽光発電で売電するために必要な、工事費負担金の支払いが遅れると接続契約の取り直しになるという発表です。
※工事費負担金…電力会社が発電所と電線網を繋げる連系工事にかかる費用
下の表は、今回の変更内容を簡単にまとめたものです。
今までは、とりあえず売電価格を確保して、実際に設置の目処がたってから支払うことができました。
しかし、今後は、設置の時期に関係なく工事費負担金を支払わないと、売電価格の確保ができなくなります。
この記事では、次の4点を詳しく解説しています。
・【解説】発表の要点
・【影響】売電価格の確保、維持に必要なこと
・【背景】なぜ運用ルールが変更されたのか
・【Q&A】よくある質問
最後まで読めば、運用ルールを理解して確実に売電価格を確保することが可能になります。
工事費負担金について詳しく知りたい方は次の記事もあわせてご覧ください。
2014年度以前の売電価格を確保している場合は「系統連系工事着工申込書」の提出を忘れずに!
2019年12月5日に、経産省から未稼働の太陽光発電への対応が公表されました。
次の2つに該当する未稼働の太陽光発電は、2019年2月1日までに電力会社へ「系統連系工事着工申込書」を提出する必要があります。
・2014年(平成26年)以前に設備認定を取得している
・2016年7月31日までに、電力会社と接続契約を結んでいる
2019年1月8日に中部電力から申込書の様式が公開されました。
該当する場合は、忘れずに申込書を提出しましょう。
1. 中部電力の発表「再エネ契約締結から連系せずに長期間経過しているお客さまへ」の要点
今回発表された「再エネ契約締結から連系せずに長期間経過しているお客さまへ」の要点は2つあります。
いずれも、電力会社からの請求日が基準です。
請求書が届いた時期、設置予定の時期には関係ありません。
1-1. 発表の要点①「改めて請求があった日から1ヶ月以内に振り込まないと、接続契約取り消し」
1つ目は、すでに工事費負担金の請求がされていても、未入金となっている案件の扱いです。
工事費負担金が未入金の案件には、最終的な請求書が届きます。
その請求日に記載されている支払期日(発行日から1ヶ月後)までに振込を行わないと、支払期日の翌日に電力会社との接続契約が取り消されます。
一度電力会社との接続契約が取り消されてしまうと、確保していた売電価格の適用を受けることができません。
(前略)改めて工事費負担金をご請求させていただきます。なお、その際のお支払い期限については、ご請求の日から1ヶ月とし、期限内にお支払いいただけない場合は支払い期限日の翌日付で再エネ契約を解除するとともに、再エネ契約に関連する需給契約の申込みについても、廃止もしくは申込み取り消しの意思表示がなされたものとみなし、取り消しとさせていただきます。(中略)認定の変更手続きが必要となりますが、この際、適用単価は変更認定日が属する年度の単価となりますので、ご留意いただきますようお願いいたします。
2018.8.10 中部電力「再エネ契約締結から連系せずに長期間経過しているお客さまへ」より抜粋
通知や請求書は、設置予定の人本人の手元に届く場合と、申し込み手続きを行った工事店に届く場合があります。
思い当たる案件がある方は、電力会社からの書面を見落とさないように、業者に届いていないか確認を怠らないようにしましょう。
1-2. 発表の要点②「新規の申し込みも1ヶ月以内に振り込まないと、契約取り消し」
2つ目の要点は、今後新しく売電を申し込む案件の扱いです。
今後新しく申し込む場合でも、請求日から1ヶ月以内に振り込まないと契約取り消しとなります。
(前略)今後契約を締結する際にご請求する工事費負担金について、期限内(ご請求の日から1ヶ月)にお支払いいただけない場合には、期限日翌日付でご契約を解除いたします。(後略)
2018.8.10 中部電力「再エネ契約締結から連系せずに長期間経過しているお客さまへ」より抜粋
経済産業省の事業計画認定が下りる前に支払いを済ませる必要があります。
2. 運用ルール変更の影響と対策
今回の発表で、中部電力管内では工事費負担金の支払いまで済ませないと売電価格を確保できなくなりました。
設置予定の太陽光発電がある方は、次のような対応が必要です。
2-1. 工事費負担金振込用紙の内容を確認する
まずは手元に工事費負担金の振込用紙が届いているか確認しましょう。
届いていたら、支払い期日と契約解除についての記載があるか確認しましょう。
届いていないなら、設置業者に届いている可能性もあります。
確認してもらいましょう。
2-2. 設置する可能性があるなら工事費負担金を支払っておく(返金可能な場合もあり)
一番困るのは、以前に売電価格を確保したものの、太陽光発電の総費用や行政の許認可などの兼ね合いで本当に設置できるかわからない場合です。
結局設置できなかったら払い損になってしまうのでは、と不安になりますね。
結論としては、設置する可能性があるなら工事費負担金を支払っておくべきでしょう。
何故なら、太陽光発電所の設置を見送る場合に、電力会社の工事前であれば返金される場合もあるからです。
ただし、営業所ごとの判断の差異や対応の変更が生じる場合もありますので事前の確認が必須です。
事前確認の返答を受けてから自己責任でご判断ください。
後々、「言った言わない」で揉めることがないように書面でのやり取りをおすすめします。
2-3. 未稼働の分譲用太陽光発電(土地付き太陽光発電)を購入する際は、工事費負担金を支払い済みかの確認が必須
今後中部電力管内の未稼働分譲用太陽光発電を売買する際には、チェックポイントが一つ増えます。
「工事費負担金を支払い済みかどうか」という点です。
事業計画認定の認定日や、接続契約書の日付ではわからないポイントです。
明確に「工事費負担金を支払っているか」を確認しましょう。
3. 運用ルール変更の理由は未稼働案件の増加
3-1. 工事費負担金未払いの場合に接続契約を取り消すのは電力会社の権利
もともと電力会社には、工事費負担金の請求から1ヶ月以内に支払いがない案件の契約を取り消す権利が認められています。
これまでは、いわば中部電力の好意で待ってもらうことができていました。
それができなくなったのは、未稼働案件が増えて電力網の運用管理に支障が出てきたからです。
3-2. 未稼働案件が増えると新しい発電設備を設置するのが困難になる
太陽光発電を含む再生可能エネルギーの売電申し込みを受けたら、電力会社は接続検討を行います。
・どこの電線網に繋がるのか
・発電所の発電量を受け入れるだけの余裕が、そこの電線網にあるのか
・設備を増強する必要はあるか
電力会社は検討結果に応じて工事費負担金を算出し、発電設備の設置者と接続契約を結びます。
接続契約を結んだ時点で、その発電所が使う分の容量を確保します。
確保された容量は、発電所が稼働し始めるまでは空いているのに使えない、という状態になります。
簡単な例を出します。
100kWの太陽光発電を接続できる余裕がある電力網の場所で、Aさん、Bさん、Cさんの3人がそれぞれ50kWの太陽光発電をつけようとしています。
Aさんはとりあえず申し込んだだけで、本当に設置するかどうかも決めていません。
Bさんは2年後、Cさんは1年後に設置する予定です。
Aさんが最初に、Bさんが2番目に、Cさんが最後に売電の申し込みをしました。
AさんとBさんは、それぞれ50kW分の容量を確保できました。
Cさんが申し込んだ時点で、電力網の容量が足りなくなっていました。
この場合、AさんとBさんは設備を増強せずに売電することができます。Cさんは50kW分設備を増強しないと売電できません。
Cさんは、今は設備に余裕があるのに、電力網を増強しないと売電できないのです。
簡易化した例ですが、同じことが大規模に日本中で起きているのが現状です。
これでは、どこにどれだけ余裕があるのか、実情と書面上両方把握するだけで手いっぱいになってしまいます。
この状況を是正するために、電力会社が権利を行使することになりました。
3-3. 設置予定があるなら支払いを済ませる
工事費負担金は数万円から数十万円と、それなりの金額がかかります。
実際に設置するかどうかわからないものに支払うにはなかなか難しい金額です。
「とりあえず確保しておいた」という案件が運用ルールの変更で減れば、本当に設置したい人が設置できるようになる、
と期待されています。
実際に設置するつもりなら、忘れずに支払いを済ませましょう。
4. Q&Aソラサポに寄せられた質問
4-1. 1年後に設置するつもりだから、1年後に支払いたいです。待ってもらえませんか?
電力会社は、工事費負担金の振り込みをもって「設置の意思あり」と判断します。
工事費負担金を振り込まない限り、売電価格の確保はできません。
4-2. 申し込みした時の内容から設備を変更したいです。負担金の支払いはどうなりますか?
運転開始前に設備を変更する場合、負担金の変更が入る場合があります。
そのような場合でも、最初に届いた振り込み用紙で工事費負担金を振り込んでください。
金額に変更があった場合、後から差額を清算します。
4-3. 太陽光発電を設置しなかった場合は、負担金はどうなりますか?
電力会社の工事前であれば、基本的には返金されます。
ただし、例外もあります。
外線工事や引き込み工事が完了していた場合、返金されません。
確実に設置すると決まるまでは工事しないようにお願いしましょう。
返金対応については運用が変わる可能性もありますので、必ず事前に確認して自己責任でご判断ください。
後々、「言った言わない」で揉めることがないように書面でのやり取りをおすすめします。
4-4. 太陽光発電を1年後に設置する予定ですが、負担金を振り込んだら電力会社の工事はいつやりますか?
案件や状況によって異なります。
管轄の営業所に確認しましょう。
本当に設置できる状態になるまでは、工事を待つように伝えましょう。
4-5. 古い申し込みから順番に実施するのですか?
順不同です。各営業所で処理できたものから順次通知を発送している状態です。
申し込み時期が古いから早く届く、新しいから遅く届くとは限りません。
通知や振り込み用紙が届いたら早めに対応しましょう。
4-6. まだ認定も降りていないのに、支払いをしないといけないのですか?
その通りです。
新規認定申請の場合、経産省の認定が下りるよりも前に負担金を支払うことになります。
支払わないと、せっかく認定が下りても売電価格の確保ができません。
4-7. 支払い期限は1ヶ月と聞いたのですが、振込用紙に書いてある期限はもっと短いです。どちらが正しいですか?
振込用紙に書いてある期限が正しいです。
支払い期限は、「電力会社の請求日から1ヶ月」です。
お手元に届いた時点からは1ヶ月を切ります。
遠方の発電所の場合、届くまでに時間がかかります。
まとめ
工事負担金の運用ルール変更は、売電価格を確保している人とこれから売電価格を確保する人の両方に大きな影響があります。
いずれの場合も、売電収入が得られる時期の目処が立つ前に支払うことになりますので、不安もあると思います。
しかし制度運用上、支払わないことには売電価格の確保や維持ができません。
できるだけ早い時期に支払いを済ませて売電価格を確保しましょう!