未稼働太陽光対応のパブリックコメント結果|売電単価減額の回避方法

固定価格買取制度(FIT)開始当初に売電価格を取得したけど、運転開始していない太陽光発電を持っている方はこんなふうに考えていないでしょうか。

高い売電単価で運転開始期限もついていないし、ゆっくり考えて太陽光発電を設置しよう。

突然ですが、その考え方は出来なくなるかもしれません。

2018年12月5日に経済産業省から「FIT制度における太陽光発電の未稼働案件への新たな対応を決定しました」という発表がありました。
10月15日に開催された小委員会の内容を受けて、パブリックコメントを募集していたものが正式に決定されたのです。

2019年4月1日をめどに、一部の運転開始期限のない認定に期限が作られることになりました。

この記事では、経産省の発表について次の4点を解説します。

【1】制度変更の内容
【2】売電価格を維持するために必要な行動
【3】発表の背景
【4】今後行われるかもしれない変更

今回の発表では、これまでになかった新しい手続きが加えられます。
また、決められた時期までに手続きや施工が進んでいないと、売電価格を維持できません。

知らなかった、気づかなかったでせっかくの権利が消えてしまわないようにご注意ください。

中部電力から「系統連系工事着工申込書」の様式が発表されました

2019年1月8日に中部電力から「系統連系工事着工申込書」の様式が発表されました。
添付書類は不要で、1月11日から受付開始となります。

他の電力会社でも順次発表される予定です。
2月1日に間に合うように確認しましょう。


1. 制度変更の内容:1つの手続きと2つの期限が追加される変わりに、太陽光パネルを変更できる

パブリックコメントを経て、運転開始期限のない太陽光発電の一部に2つの期限が設けられました。
対象となる太陽光発電は、太陽光パネルの変更が可能になりました。

対象となる条件と、具体的な期限を詳しく説明します。

1-1. 対象となる条件:運転開始前、10kW以上、運転開始期限がついていない、2014年度以前の認定である

4つの条件を満たす太陽光発電は原則対象となる

対象となる条件は4つあります。

・運転開始前であること
・10kW以上であること
・運転開始期限がついていないこと(2016年7月31日までに電力会社と接続契約を結んでいる)
・2014年度以前の設備認定であること

接続契約の日付は、電力会社発行の接続同意書類で確認できます。
みなし認定移行手続きを行った際に使っている書類です。

この4条件に当てはまっても、大規模な案件は猶予期間がつく、または対象外になる場合があります。

2MW以上や条例アセスの対象案件は猶予期間がつく

大規模な太陽光発電や、自治体の条例で環境アセスメントが必要な案件は実際に設置できるまで時間がかかります。

そのため、変更の対象ですが半年から1年間の猶予期間がつきます。

2MW以上で開発工事に本格着手済みの場合は特例で適用対象外

2MW以上の太陽光発電の中でも、特に2018年12月5日時点で「工事計画届出」が受理されている場合は適用対象外です。
開発工事に真に本格着手済みなので、実際に稼働すると期待できるためです。

ただし、期限の対象外にはなりますが後述の「系統連系工事着工申し込み」の手続きは必要です。
また、太陽光パネルを変更すると特例から外れてしまいます。

 

1-2. 新しく作られる手続き「系統連系工事着工申し込み」

電力会社に連系工事を申し込む手続きが作られる

今回の変更で、電力網と発電所を電線でつなぐ連系工事の実施を電力会社に依頼する手続きが新たに作られました。

以前は、設置業者が太陽光発電所の設置時期にあわせて依頼していましたものを一つの手続きとして明確に位置付けたものです。

申し込みの提出には3つの条件を満たすことが必要

系統連系工事着工申し込みを提出するには、3つの条件を満たす必要があります。

① 提出時点で、設置する土地の使用権原を取得できていること
② 提出時点で、次の許認可に関わる手続きが終了していること(必要な場合)
 ・農振除外、農地転用の「許可の取得」または「届出の受理」
 ・条例に基づく環境影響評価の評価書の公告、縦覧
 ・林地開発の許可の取得
③ 提出後、運転開始までの間に変更認定申請を行わないこと

系統連系工事着工申し込み後に、どれか一つでも満たせていないことが判明したら再申し込みが必要になります。

 

申し込みの様式、添付書類等具体的な内容は未定

2018年12月20日現在、具体的な様式や添付資料は未定です。
今後発表があり次第、期限内に揃えて提出する必要があります。

中部電力から「系統連系工事着工申込書」の様式が発表されました

2019年1月8日に中部電力から「系統連系工事着工申込書」の様式が発表されました。
添付書類は不要で、1月11日から受付開始となります。

添付書類はありません。
設置者の捺印が必要です。

他の電力会社でも順次発表される予定です。
2月1日に間に合うように確認しましょう。

 

1-3. 1つ目の期限:連系工事の申し込みの「提出日」と「受領日」に期限がつく

新しく作られた系統連系工事着工申し込みは、「提出日」と「受領日」に期限がつきます。

発電設備の規模提出日の期限受領日の期限
2MW未満2019年2月1日(金)2019年3月31日(日)
2MW以上2019年8月末(目処)2019年9月30日(月)
条例アセス対象2020年2月末(目処)2020年3月31日(火)

提出した書類に不備があった場合、訂正が必要になります。
電力会社が不備のない書類を受領した日付が受領日となります。

提出が間に合ったからといって、不備の連絡に気づかず放置してしまうとせっかくの売電価格が下げられてしまいます。
必ず受領してもらえたかまで確認しましょう。

 

2019年2月以降に売電開始する場合は連系工事の申し込みが必要

今回の変更の対象になっているが、近々売電開始する予定でも連系工事の申し込みが必要になる場合があります。

連系工事の申し込み「提出期限日」以降に売電開始する場合です。

もうすぐ売電開始だから関係ないと思っていたら申し込みができていなかった、となると大変です。
余計に待たされる可能性や、最悪売電価格が下げられる可能性もあります。

2019年2月1日以前の連系予定でも、天候や施工の遅れを考えて提出しておく方が無難です。

 

1-4. 受領が遅れた場合のペナルティ:連系工事申込の受領日から2年前の売電価格が適用される

申込の受領日が期限を超えてしまった場合、売電価格が下がります。
受領日を基準として、2年前の売電価格が適用されます。

2019年4月1日が受領日となった場合、2017年4月1日の売電価格である21円になります。

 

1-5. 受領日が変更となる場合、売電価格が変更されることに注意

一旦連系申し込みが受領されても、受領日が変更となる場合があります。

申し込み提出の3条件を満たしていないことが判明した場合です。
再度連系申し込みを行うことが必要となります。

受領日は再申し込みが受領された日付に変更となり、売電価格も変更となってしまいます。

太陽光パネルを変更する、設置者名義を変更する場合は、連系申し込み前に行う必要があります。

 

1-6. 2つ目の期限:運転開始に期限がつく

2つ目の期限は、運転開始日の期限です。
連系申し込み受領日の期限または受領日から1年の、どちらか長い方が運転開始期限です。

これは、新しく認定を取得した場合の、運転開始期限が認定日から3年になっていることに合わせて決められました。

 

1-7. 運転開始が遅れた場合のペナルティ:今後経済産業大臣が決定する

運転開始が遅れた場合のペナルティは未定です。

調達価格等算定委員会で、運転開始が遅れた分だけ月単位で売電期間を短縮するという案が出されている状態です。
この案を尊重して経済産業大臣が今後決定することになります。

 

1-8. 対象となる案件は太陽光パネルの変更が可能になった

新たな手続きと期限が決められた一方で、太陽光パネルの変更が解禁されました。
太陽光パネルのメーカーや種別を変更できるため、より発電効率の良いパネルで設置することができます。

ただし、次の2点に注意が必要です。

・太陽光パネルの合計出力増加の制限はかけられている
・連系申し込み後に変更すると売電価格が下げられる

太陽光パネルの合計出力が3%以上または3kW以上増えてしまうと売電価格が変更されます。
パネル枚数を減らして調整する必要があります。

連系申し込み後の変更認定申請は、連系申し込みの再提出が必要となります。
受領日も再提出後の日付となります。

太陽光パネルを変更する場合は、連系申し込み前に合計出力が増えすぎないよう注意してください。

 


2. 売電価格を維持するために必要な行動:確認と連系申し込み

売電価格を維持するためには、次の4つの行動が必要になります。

  • 今回の変更の対象となっているか確認する
  • 連系申し込みの要件を満たせるか確認する
  • 太陽光パネルを変更するか判断する
  • 連系申し込みを期限までに提出する

 

2-1. 最初に確認すること:今回の変更の対象となっているか

今回の変更の対象は、4つの条件に当てはまる太陽光発電です。

・運転開始前であること
・10kW以上であること
・運転開始期限がついていないこと(2016年7月31日までに電力会社と接続契約を結んでいる)
・2014年度以前の設備認定であるであること

事業計画認定通知書や接続の同意書類で、対象となっているかを必ず確認しましょう。

 

2-2. 2番目に確認すること:連系申し込みの提出に必要な要件を満たせるか

連系申し込みの提出期限までに、3つの要件を満たせるかどうか確認しましょう。

① 提出時点で、設置する土地の使用権原を取得できていること
② 提出時点で、次の許認可に関わる手続きが終了していること(必要な場合)
 ・農振除外、農地転用の「許可の取得」または「届出の受理」
 ・条例に基づく環境影響評価の評価書の公告、縦覧
 ・林地開発の許可の取得
③ 提出後、運転開始までの間に変更認定申請を行わないこと

①は他者名義の所有地に設置する場合特に重要です。
何を持って権原があると判断されるか確認しましょう。

②が間に合わない場合、2年前の売電価格(21円)で設置しても収益が見込めるか、見極める必要があります。

③は、連系申し込み後はパネルの変更や設置者名義の変更ができないということです。
変更認定申請中でも連系申し込みは可能です。
変更したい場合は、連系申し込みまでに必ず済ませましょう。

連系申し込みの提出期限、受領期限は次の通りです。

発電設備の規模提出日の期限受領日の期限
2MW未満2019年2月1日(金)2019年3月31日(日)
2MW以上2019年8月末(目処)2019年9月30日(月)
条例アセス対象2020年2月末(目処)2020年3月31日(火)

特に2MW未満の場合、提出期限までが非常に短いです。

農地転用など許認可関係が未取得の場合は、2019年2月1日(金)に取得できるかすぐに確認しましょう。

 

2-3. 系統連系工事着工申し込みの前に:太陽光パネルを変更するか判断する

系統連系工事着工申し込み後に変更認定を行うと、再提出が必要になります。
太陽光パネルを変更するなら、系統連系工事着工申し込み前に変更認定申請を提出しましょう。

 

2-4. 系統連系工事着工申込書を提出する:書式や添付書類は今後発表される

自分の権利が対象になっていること、期限までに要件を満たせることを確認したら、系統連系工事着工申し込みの書式や添付書類を確認しましょう。

2018年12月20日時点ではまだ具体的に決まっていませんが、2019年2月1日までに揃えて提出する必要があります。
あまり時間がありませんので、できるだけ早く確認し、作成する必要があります。

 


3. 期限が区切られる背景

今回、運転開始期限のない案件に対して期限が区切られるのは3つの理由からです。

3-1. 再エネ賦課金による国民負担の増加

高い売電価格を確保している案件は、再エネ賦課金として国民負担になる金額も大きくなります。
一方で、太陽光発電の「コストダウンは他の再生可能エネルギーよりも進んでいます。

その結果、制度で当初想定していたよりも、事業者の利益が大きくなってしまうという状態が発生しています。

3-2. 新規開発、コストダウンの足かせ

発電事業者も工事業者も、高い売電価格の案件を優先するために新規開発が後回しになります。
高い売電価格であれば、コストダウンしなくても高収益が見込めるため、結果的にコストダウンが進みません。

 

3-3. 系統容量の空抑え

売電価格を確保しているということは、電気を流すための系統容量を確保しているということです。
今は、系統容量を確保しているのに使っていない人がたくさんいるという状態です。

実際に流れている電気の量を見ると余裕があるのに、確保だけしている人がいるために新しい発電所を繋げられないという状態になります。

 


4. 今後行われるかもしれない変更

今回のパブリックコメントは、経済産業省の再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会で議論された、「既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応」という資料の内容に基づいたものです。

この資料にはパブリックコメントにかけられた内容以外にも、いくつかの議題がありました。

今後実施されるかもしれない変更として、ご紹介します。

4-1. 2015年度、2016年度売電価格の認定にも同じ変更が適用される

今回の変更では、2015年度と2016年度の運転開始期限なしの認定は対象外となっています。

小委員会での議論では、2015年度の認定は2020年3月末を、2016年度の認定は2021年3月末を連系申し込みの提出期限とする案が示されました。

今後、同様に実施される可能性もあります。

 

4-2. 運転開始済みの産業用太陽光発電に蓄電池を設置する場合に制限がつく

すでに運転開始している太陽光発電所に蓄電池を設置すると、ピークカットや電圧抑制のため捨てられていた電気を売電することができます。
これは、以前禁止された事後的過積載と同じ「安くなった設置費用で想定以上の売電収入を得る」方法のため、現在の制度では認められていません。

しかし、再生可能エネルギーの有効活用には有益な技術です。
そこで、一定の条件をつけて蓄電池の設置を認めることが議題にあげられました。

良いことのように見えますが、実は現在の制度上、蓄電池の設置を禁止する規定がありません。
問い合わせると、制度上認めていないという返答がきましたが、制度設計時に想定されていないのでなんの規定もないという状態です。

そのため、実際には運転開始している発電所に蓄電池を設置することは可能です。

実質的には蓄電池の事後的設置に制限がかけられるということになります。

 

4-3. 住宅用太陽光発電のリプレースはFIT対象外

今まで不明確だった住宅用太陽光発電のリプレース(付け替え)について、「FITの適用は認められない」と明記されています。

現行制度では、今固定価格買取制度で売電している太陽光発電を廃止すれば、新たに固定価格買取制度の適用を申請することができます。
それが今後、禁止される可能性が出てきました。

 

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まとめ

今回の変更は、2019年2月1日までに対応しないと売電価格を引き下げられるという非常に厳しいものです。

期限が非常に近い割に、2018年12月20日現在で書式や必要書類といった具体的な手続き内容が決まっていません。
決定し、公開され次第すぐに対応する必要があります。

今回対象外となっている2015年度、2016年度の認定も、今後同じ変更が行われる可能性もあります。
その時になって焦らずに済むよう、設置を急ぎましょう。

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