
太陽光発電の自立運転、使ったことありますか?
災害などの停電時に電気を使えるとして、太陽光発電のメリットとして紹介される自立運転は非常に便利な機能です。
しかし実際に必要になる場面が少ないため、使い方がわからない、忘れてしまったから教えて欲しいという声をよく聞きます。
どんな機能なのかよくわからなくて、うまく使えなかったという話もあります。
また、2020年度から10kW以上50kW未満の太陽光発電で新たに認定を取得するためには、自立運転を使用できることが必須の条件になりました。
そのために自立運転についてしりたいという問い合わせもいただくようになりました。
この記事では、太陽光発電の自立運転機能について次のことをご紹介します。
・自立運転の使い方
・自立運転でできること
・自立運転でやってはいけない使い方
・よくある誤解や質問
・地域活用電源と自立運転の関係
どんなに便利な機能でも、実際に使えなくては意味がありません。
自立運転の使い方と性能を理解して、いざという時に備えましょう。
目次
1. 自立運転の使い方
自立運転とは、停電時(電力会社からの電気を使えない時)に太陽光パネルが発電した電気をパワコンから直接使用する機能です。
自立運転機能付きのパワコン1台あたり1500wの電気を使用できます。
自立運転で電気を使うには、パワコン本体もしくはリモコンで切換操作をする必要があります。
切換操作は次の6ステップです。
①「自立運転用コンセント」の位置を確認する
②取扱説明書で「自立運転モード」への切り替え方法を確認する
③「主電源ブレーカー」をオフにする
④「太陽光発電ブレーカー」をオフにする
⑤「自立運転モード」に切り替える
⑥「自立運転用コンセント」に必要な機器を接続して使用する
⑦停電復旧時には「自立運転モード」解除 → 「太陽光発電ブレーカー」オン → 「主電源ブレーカー」オン の順で、必ず元に戻す
実際に一度やってみましょう。
大前提:自立運転機能を使うためには専用コンセントが必須
まずは自立運転用のコンセントを設置しているか確認してください。
屋外用パワコンには自立運転機能付きだがコンセントはついていない、というものが多いです。
手順①:自立運転用コンセントの位置を確認する
最初に、自立運転時に電気を使用できるコンセントの位置を確認します。
自立運転コンセントの位置は、パワコンと施工によって2種類に分かれます。
パワコンに付いている自立運転用コンセントを使用する場合
屋内用パワコンの場合、パワコン本体の側面か下部に「自立運転用コンセント」(非常用コンセント)がついていることが多いです。
太陽光発電の設置時に自立運転用コンセントの設置工事をしていなければ、パワコン本体についているコンセントが自立運転用コンセントです。
パワコン本体の側面を確認してみましょう。
別途設置した自立運転用コンセントを使用する場合
屋外用パワコンなど、自立運転用コンセントがパワコン本体に付いていない場合は、別途自立運転用コンセントを設置する必要があります。
パワコン本体についていても、不便な場所の場合別途専用コンセントを設置することもあります。
太陽光発電の設置時に取り付けた場所を確認してください。
手順②:取扱い説明書で操作方法を確認する
コンセントを確認したら、取扱い説明書を読みましょう。
自立運転に切り替えるための、パワコンやリモコンの操作方法を確認します。
取扱い説明書を保管していない場合は、メーカーで公開されている取扱説明書や自立運転機能の使い方説明書を印刷してパワコンの近くに保管しておくのがおすすめです。
手順③:主電源ブレーカーをOFFにする
取扱説明書を読んだら、ご自宅の主電源ブレーカーをOFFにします。
パワコンが発電した電気が電力網側に流れないようにするためです。
分電盤の左から2番目についているブレーカーがメインブレーカーです。
※サービスブレーカーがない場合は一番左側になります。
特に地震など災害で停電した際は必ず行ってください。家の外で電線が切れていたために、火事になった事例があります。
手順④:太陽光発電のブレーカーをOFFにする
パワコンと分電盤をつなぐ配線のブレーカー(太陽光発電のブレーカー)をOFFにします。
また、災害の有無に関わらず、自立運転に切り替えることで電気系統に重大な事故を起こす可能性があります。
取扱い説明書に指示が無くても、太陽光発電用のブレーカーをOFFにしてください。
太陽光パネルとパワコンの間のブレーカー(スイッチ)までOFFにしてしまうと、太陽光パネルで発電した電気がパワコンに届かなくなります。
太陽光パネルからパワコンまで電気が届かないと、自立運転機能も使えません。
自立運転を使う場合は、太陽光パネルとパワコンの間のブレーカー(スイッチ)はONのままにしてください。
手順⑤:自立運転モードに切り替える
取扱い説明書をよく読み、自立運転モードに切り替えてください。
切り替え方法は次の3つが主流です。
パターン① パワコン本体の「運転/停止」スイッチで操作するパワコン(押すタイプ)

押しボタン一つまたは2つで操作するタイプのパワコンです。
基本的な操作方法は次の通りです。
・「運転/停止」スイッチを1回押して、パワコンを停止(OFF)にする
・「運転/停止」スイッチをもう1回押して、パワコンを自立運転モードに切り替える
メーカーや機種によって数秒長押しする、スイッチが2つに分かれているといった違いがあります。
このタイプのパワコンを販売しているのは次のメーカーです。
オムロン、カナディアンソーラー※、カネカ、Qセルズ※、京セラ、サンテック、シャープ※、ソーラーフロンティア、ダイヤモンド電機、田淵電機※、長州産業※、東芝※、パナソニック(太陽光)※、LIXIL※
※印のメーカーは違う操作方法のパワコンも発売しています。
型番で確認しましょう。
パターン② パワコン本体の「運転/停止/自立運転」スイッチで操作するパワコン(左右で切り替えるタイプ)

横にスライドする切り替えスイッチタイプのパワコンです。
基本的な操作方法は次の通りです。
・「運転/停止/自立運転」を「運転」から「停止」へ切り替える
・「運転/停止/自立運転」を「停止」から「自立運転」へ切り替える
メーカーによってスイッチの位置が違う、一旦停止する必要がない等の違いがあります。
このタイプのパワコンを販売しているのは次のメーカーです。
IDEC、エクソル、カナディアンソーラー※、Qセルズ※、デルタ電子、東芝※、三菱、LIXIL※
※印のメーカーは違う操作方法のパワコンも発売しています。
型番で確認しましょう。
パターン③ リモコンで操作するタイプ

付属のリモコンで操作するタイプです。
基本的な操作方法は次の通りです。
・リモコン正面または側面の「連系/自立」または「運転/停止」ボタンを押す
メーカーや機種によって一旦運転停止する必要がある、「連系/自立」と「運転/停止」両方のボタンを操作する必要があるなどの違いがあります。
このタイプのパワコンを販売しているのは次のメーカーです。
シャープ※、田淵電機※、パナソニック(太陽光発電)※、パナソニック(蓄電池)、LIXIL※
※印のメーカーは違う操作方法のパワコンも発売しています。
型番で確認しましょう。
手順⑥:使いたい機器を自立コンセント(非常用コンセント)につなぐ
使用したい機器(充電器、ライト等)をコンセントにつなぎます。
このとき、機器の電源がOFFになっていることを確認してください。
思いがけない事故や怪我につながります。
パワコン本体のコンセントは高い位置にあることが多いので、長めの延長コードを非常時に備えて用意するのがお勧めです。
手順⑦:停電から復旧したら連系運転に戻す
停電が終わったり、自立運転のテストが終わったら、連系運転に戻しましょう。
自立運転のままだと売電できません。
基本的な手順は次の通りです。
・パワコンを停止する(自立運転を停止する)
・太陽光発電のブレーカーをONにする
・分電盤のメインブレーカーをONにする
・パワコンを再起動する(連系運転を開始する)
パワコンメーカーや機種によって操作方法が異なります。
必ず取り扱い説明書類で確認しましょう。
また、最後にちゃんと売電できているか、「連系」というランプが点灯していることを確認しましょう。
2. 自立運転を快適に使うため知っておくべき3つのこと
自立運転は停電時に電気を使える便利な機能ですが、限界があります。
自立運転がどの程度使える機能なのか解説します。
2-1. 自立運転で使える電力量、コンセント、時間帯の制限
自立運転を使う際に把握しておきたいのが、使える電力量の上限と使える時間帯、コンセントという機能の限界です。
・使える電気は100Vで、最大1500wまで
・日差しがある間だけ使用できる
・自立運転用コンセントのみ使用できる
使える電気は100Vで、1500wまで
自立運転で使用できる電気は100Vです。
1500wが上限です。古い機種では700wが上限の物もあります。
1500wを超える消費電力量の家電は使うことができません。
200Vの家電を使うこともできません。
日差しがある間だけ使用できる
自立運転は太陽光発電で作った電気を使います。
そのため、太陽光発電が発電できない夜間は使えません。
早朝や夕方は使える発電量が少ないため、使える電気が少なくなります。
曇りや雨の場合も同じく、使える電気が少ないです。
また、太陽が雲に隠れた場合など、一時的に発電量が少なくなることもあり、
出力が安定しない場合もあります。
自立運転用コンセントのみ使用できる
自立運転時は、普段使用していない自立運転用コンセントでのみ電気を使うことができます。
使いたい家電をコンセントの近くまで移動させるか、延長コードで繋ぐ必要があります。
2-2. 災害時に自立運転で実際に使用された家電のトップは冷蔵庫と携帯電話
自立運転でできる範囲で、どの家電をどこまで使えるのか考えるのは大変です。
そこで、災害時に実際に自立運転で使用した家電のアンケート結果をご紹介します。
2019年の台風15号を受けて、太陽光発電協会が実施したアンケート結果を資源エネルギー庁が公開した資料です。
出典 資源エネルギー庁 2019年12月6日付公開資料 太陽光発電設備の自立運転機能の周知について
縦軸の単位は件数です。
アンケートで自立運転を使用した388件のうち、何件がどの家電を使用したかのグラフです。
食事と情報源の確保が第一で、清潔な衣類の確保が第二、そして住環境の維持の順に活用されました。
これらの家電と自立運転コンセントまでの距離を一度確認しておきましょう。
エアコンや洗濯機の乾燥機能を使用するには、100Vに対応していること、自立運転の出力範囲内で動くこと、安定した動作には蓄電池が必要なことといった条件があります。
停電時にこれらの家電を使いたい方は、各家電の出力を把握した上で蓄電池の導入を検討しましょう。
2-3. 自立運転使用時にあると便利なもの
自立運転時に使いたい家電が、全部自立運転コンセントの近くにあるという方はほぼいないでしょう。
自立運転を使う時だけ家電を動かすというのも大変です。
自立運転時にあると便利な道具をご紹介します。
・延長コード
・モバイルバッテリー(小型バッテリー)
・USBライト、充電式ライト(充電式乾電池と懐中電灯)
・蓄光テープ(蓄光シール)
延長コード
災害時に使いたい家電の近くまで届くように、延長コードを用意しておきましょう。
10m程度の長い物を1本用意しておくと、離れた場所の家電も使えて便利です。
モバイルバッテリー(小型バッテリー)
住宅用蓄電池は大げさと思う方にオススメなのがモバイルバッテリー(小型バッテリー)です。
携帯電話向けのモバイルバッテリーでもあれば、スマートフォンを夜間照明がわりに使うなどできます。
100Vコンセント付きのものもあるので、出力の範囲内で夜間に電気を使えるようになります。
専用のバッテリーを用意するのはもったいないと思う方には、ジャンプスターターもおすすめです。
自動車のバッテリーが上がった時に、エンジンをかけるために使うのが本来の用途です。
現在はLEDライトやUSBポートといった、停電時に役立つ機能が付属しているものも販売されています。
普段は車の中に積んで置き、停電時には自立運転機能と併せて活用してはいかがでしょうか。
USBライト、充電式ライト(充電式乾電池と懐中電灯)
モバイルバッテリーから電気をとれるUSBライトや、充電式のライトを用意しておけば日中充電して夜間の明かりに使用できます。
LEDライト付きの小型バッテリーやジャンプスターターと組み合わせて使えば、充電式懐中電灯は移動用に、部屋の明かりはバッテリーにと使い分けもできます。
蓄光テープ(蓄光シール)
小型バッテリーや懐中電灯、延長ケーブルといった停電対応用品、およびそれらがしまってある戸棚等には蓄光テープを張って夜間でもわかるようにしておくことがおすすめです。
停電時一番最初に困るのは、停電した直後の何がどこにあるのか全く見えない状態です。
懐中電灯やバッテリーといった停電対策用品を取ってくるまでは手探りになってしまいます。
蓄光テープが張り付けてあれば、暗闇の中でもどこにあるのか判別できます。
家具の角や廊下の角等ぶつかりそうな場所にも張り付けておけばより安全です。
停電初日はバッテリーや懐中電灯に充電されている最低限の明かりで乗り切り、翌日からは自立運転を活用して必要な電気を確保しましょう。
3. 自立運転でやってはいけない4つの使い方
自立運転機能を使うときに、やってはいけない使い方があります。
自立運転機能が停止したり、事故等命に係わるトラブルも考えられます。
これからご紹介する使い方は絶対にやってはいけません。
3-1. 生命に関わる医療機器を使用する
太陽光発電の電力供給は不安定です。出力が安定しないので、突然停止する可能性があります。
在宅人工呼吸器など、24時間安定して動作する必要がある医療機器を自立運転で使用しないでください。
突然停止してしまうと生命にかかわります。
3-2. パソコンなどの情報機器、灯油やガスを用いる冷暖房機器を使用する
デスクトップパソコン等の情報機器は、太陽光発電の出力が落ちた瞬間に止まってしまう可能性があります。
データが破損する恐れがある場合、使用しないでください。
ノートパソコンやタブレット等、バッテリーで動く情報機器を使いましょう。
また、灯油やガスを用いる冷暖房機器は火災につながる恐れがあります。
使用しないでください。
3-3. 消費電力の多い機器やタコ足配線で1500wギリギリまで電気を使う
自立運転用コンセントから出力できる電力は、パワコン1台につき最大で1500wまでです。(メーカーによっては700wが上限のものもあります。)
実際に使用できる電力は、日照量次第でもっと低くなります。
あれもこれもとタコ足配線で繋いでしまうと、消費電力が発電量を超えてしまって自立運転が止まります。
止まるたびに自立運転を再起動することになります。
基本的には冷蔵庫とバッテリー、携帯電話の充電に使う。
炊飯器や洗濯機を使う時はそれだけを使用する。
電気の使いかたを工夫して、できるだけ停止しないように使いましょう。
3-4. 電流が急に流れる機器を同時使用する
掃除機や電気湯沸かし器といった家電は、起動時に一気に電気を使います。
このような機器を複数同時に使用すると、パワコンの保護機能が動作して停止したり、消費電力量が発電量を超えてしまい停止してしまうことがあります。
どの家電も同時使用はできるだけ避けましょう。
4. よくある質問や誤解
自立運転はいざという時のための機能なので、普段使うことがありません。
どんな機能なのか誤解されていることがあります。
この章では、自立運転についてよくある質問や誤解をまとめました。
停電後、自立運転に切り替える操作が必要です。
発電量を消費量が上回った場合、自立運転が停止(停電)します。
自立運転が停止してしまった場合、再起動する必要があります。
・200Vの製品(エアコン、IH等)
これらの製品はつないでも動きません。自立運転が停止する可能性もあります。
また、医療機器や情報機器など、動作中に停電してはいけない製品はつないではいけません。
自立運転機能はついているけど、コンセントはついていないパワコンもあります(主に屋外用)。
そのようなパワコンは、別途自立運転用コンセントを取り付けないと使用できません。
5. 地域活用電源と自立運転の関係
2020年度から地域活用電源という枠組みが作られました。
10kW以上50kW未満の太陽光発電所で認定を取得するためには、地域活用電源として2つの条件を満たす必要があります。
・30%以上自家消費し、余った電気を売電する「余剰売電」であること
・災害時に電気を使えること
2つ目の条件を満たすために必須なのが、自立運転です。
この章では、地域活用電源としての自立運転の条件をご紹介します。
5-1. 決定している条件:合計10kW以上のパワコンに、1.5kW以上の自立運転出力が必要
2020年3月時点で決定している具体的な条件は2つです。
① 合計で10kW以上のパワコンに自立運転機能がついていること
② 1.5kW以上の自立運転出力を備えていること
10kW以上の太陽光発電では、出力4.125kWから9.9kWのパワコンを複数台設置するのが主流です。
パワコン1台の自立運転出力は1.5kWのものが主流です。
2台または3台以上のパワコンに、自立運転用コンセントを取り付ければ条件を満たすことができます。
5-2. 制度の詳細は未定
2020年3月時点ではまだ制度の詳細が決定していません。
今後詳細が決定する中で、他にも条件が付与される可能性があります。
詳細が決定するまでは、設置の検討を待ちましょう。
まとめ
実際に停電した時に、太陽光発電を自立運転に切り替えて電気を使うためには、きちんとしたやり方を知っておく必要があります。
取扱い説明書の自立運転への切り替え方法のページを抜粋し、パワコン付近に置いておくと便利です。
いざ停電になったとき、焦ってしまいうまく切り替えができないかもしれません。
定期的に太陽光発電の点検を実施して、太陽光発電が問題なく稼働していることを確認しておきましょう。
年に一度、太陽光発電が動いてる時間に切り替え操作を練習しておくのもお奨めです。
せっかく設置した太陽光発電!売電だけでなく、自立運転機能も使えるようにしましょう!