太陽光パネルの反射光!裁判事例とオーナーが設置前に知っておくべき回避方法

太陽光パネルの反射光!裁判事例とオーナーが設置前に知っておくべき回避方法

テレビで太陽光パネルの反射光が問題になってるって聞いたけど…
設置しても大丈夫なの?

最近、何かと話題になる太陽光パネルの反射光問題
これから太陽光発電を設置しようとお考えのあなたは、ご近所さんに迷惑をかけてしまわないか心配していませんか?
この記事では、実際に裁判になった事例やテレビで取り上げられた事例を紹介しています。

太陽光パネルの反射光は、どんな場合に問題になるのか。
そして、あなたが反射光の加害者にならないために知っておくべきポイントを解説します。
太陽光発電をご検討中の方はこの記事をブックマークしておいてください。


1. 反射光とは(理科のおさらい)

反射光とは、ある方向から入射された光が別の一方向に出ていくことです。
太陽光パネルの反射光に限らず、反射光の行き先は「反射の法則」にしたがって、入射角と等しい角度で反射します。
太陽光パネルは、太陽の光がパネル(セル)に当たることで発電するのはご承知の通りです。

そして、太陽光パネルは、発電効率が少しでもよくなるように「反射防止コーティング」「低反射ガラス」等の工夫がされています。
吸収しきれなかった光がパネルのガラス面で反射されます。


2. 太陽光パネルの反射光で裁判になった事例(横浜市新築住宅)

太陽光パネルの反射光を争点に裁判になった事例もあります。
問題となった発端を知ると、完全な設計ミスなので反射光以前の問題のような気もしますがご紹介しましょう。

2-1. トラブルになった経緯

横浜市でAさんが、新築の切妻屋根(三角屋根)の南面と北面に太陽光パネルを設置しました。
文章だとわかりづらいので、3Dのイメージ図をご参照ください。

反射光の裁判事例のイメージ図1
※この画像は反射光の当たり方と位置関係のイメージ図です。

更に、運悪くAさんの北側の隣家(Bさんの家)は、土地が一段高くなっており、パネルの反射光(画像の黄色部分)がBさん宅の2階と窓に当たるようになったそうです。

反射光の裁判事例のイメージ図2
※この画像は反射光の当たり方と位置関係のイメージ図です。

Bさんは、パネルの反射光に耐えかねて、Aさんと設置業者(ハウスメーカー)を相手に訴訟を起こしました。
Aさんには、太陽光パネルの撤去と損害賠償を求め、設置業者には損害賠償を求めました。

2-2. 気になる裁判所の判決結果 逆転判決の3つのポイントとは?

木槌の写真・横浜地方裁判所の平成24年4月18日判決
反射光が【受忍限度】を超えていることを理由として、原告であるBさんの主張を認め、太陽光パネルの撤去と損害賠償請求22万円を命じました。
ところが…控訴審では一転します。
・東京高等裁判所の平成25年3月13日判決
→「受忍限度を超えるものであると直ちに認めることはできない」

逆転判決の決め手は、次に挙げる3つのポイントでした。
1)他の屋根材と比べた際のまぶしさの強度
(2)反射光の差し込む時間の長さ
(一年中反射光が当たるわけではなく、春分の日:計2時間程度、夏至:なし、秋分の日:計1時間程度、冬至の日:計30分程度)
(3)被害回避措置の有無
(カーテンで簡単に回避可能)

という3つのポイントから事実認定をし直し、「受忍限度を超えるものであると直ちに認めることはできない」という結論になりました。
ただし、この判決を元に太陽光パネルの反射が問題ないと考えてはいけません。
東京高裁も、「隣接する住宅の居住者への配慮が求められる」と言及しています。
ちなみに、被告のAさんは、横浜地裁の判決が出た時点で任意でパネルの撤去をしています。
ご近所付き合いを重視されたのかもしれません。

2-3. 逆転裁判の決め手のひとつ【受忍限度】とは?

ここで、受忍限度という言葉の意味について、確認しておきましょう。

「受忍限度」とは,人が社会を形成して生活を営んでいる以上,互いに何らかの迷惑をかけあって生きているのであって,一定の範囲内で,互いに受ける迷惑・被害を受任しあう必要があるので,迷惑・被害の程度が著しいときに限って,これを違法とし,相互の利益を調整するという考え方である。
(引用元:秋野卓生・森田桂一(2014)『住宅用太陽光発電・プチソーラーの法律実務』(第4章 太陽光発電パネルの反射をめぐる法的問題 p.106-107)中央経済社.)

そもそも、土地の所有者が所有権の範囲内で土地を利用するのは自由です。
つまり、程度の問題であり社会通念上、がまんできる範囲におさまっているかということです。
従って、反射光がまぶしいからといって何でもかんでも全て違法にはなりません。
被害が一定の限度(この基準は裁判所が判断することですが)を超える場合に「不法行為」になりうるということです。


3. テレビで取り上げられた反射光問題

ある設置場所の事例が、テレビ東京とTBSの番組で取り上げられていました。
2つの画像はどちらもおなじ設置場所です。

反射光問題の事例2反射光問題の事例1

白熱ライブビビットのイメージ画像を見ると、太陽光パネルが南東向きに設置されています。
この配置では、北西にある被害者の方のお住まいに反射光があたることはほとんどないはずです。
画像(左):TBS白熱ライブビビット(2016.2.19放送分より)
画像(右):テレビ東京日曜ビッグバラエティ『今、地方を知れば日本がわかる池上彰のご当地裏事情』(2016.9.25放送分より)
反射光問題が発生した場所の航空写真googlemapで実際の場所を見てみると、パネルは南西向きに設置されています。
土地の形に合わせて南東向きにしたのでしょうか。
もし、真南か南東に向けて設置していれば、西側への反射光は減るはずなので、ここまで問題にならなかったかもしれませんね。
ちなみに、設置した業者さんは、反射光の対策として紗(日除けの網)を発電所と被害者宅の間に設けて、更に植樹をしていました。


4. 太陽光パネルの反射光はシミュレーションでわかる!

太陽の動きは決まっています。
シミュレーションをすれば、反射光がどこに何分あたるかを知ることができます。
そして、反射光は反射の法則に従って、入射角と反射角は等しくなるので、同じ場所に日中当たり続けるということは絶対にありません。
ご近所付き合いも大切ですし、太陽光発電は高額なお買い物になります。
感情論や思い込みによらず、客観的な裏付けで物事を判断することが必要です。
ソラサポでは、全ての案件で太陽光発電の設置前に必ずチェックする超重要ポイントです。
それでは、南側、東側、西側に住宅がある家で太陽光発電を設置した場合を想定してシミュレーションしてみましょう。
実際のシミュレーションでは365日分のチェックをすることになりますが、ページの都合もあるので1日分の抜粋にとどめます。

4-1. パネルの反射光をシミュレーションで確認

まずは、作成したイメージ(図1〜4)をご覧ください。
図1が全体図です。
太陽光パネルは東、南、西の3面に設置しました。
黄色い帯のようなものが反射光です。

反射光シミュレーションの全体図朝の反射光シミュレーション
昼の反射光シミュレーション夕方の反射光シミュレーション

西向きにパネルを設置すると、朝日の反射光が西側の建物にあたります。(図2)
南向きにパネルを設置すると、お昼の反射光が南側の建物にあたります。(図3)
東向きにパネルを設置すると、夕日の反射光が東側の建物にあたります。(図4)

図2は、西側の建物に西向きに設置したパネルの反射光があたっていますが、同時に朝日も射し込みます。
図4も、東側の建物に東向きに設置したパネルの反射光があたっていますが、同時に夕日も射し込みます。
反射光が当たっている場所は、日光が直接当たっている場所でもあるのです。

その一方で、パネル設置面のすぐ南側に建物がある場合は、少し変わります。
図3のように南中時刻あたりの反射光は南側の建物の北側にあたります。
また、夏至(6月20日前後)の場合は、朝日が北東から昇り、夕日は北西に沈みますので東西に設置したパネルの反射光は南に向かうことがあります。

4-2. 季節で変わる太陽の位置と動き方

反射光を考えるには、季節や時間で変わる太陽の位置や動き方をおさらいしておきましょう。
春分・夏至・秋分・冬至の太陽の高度と方位を図にしたのでご参考になさってください。

季節ごとの太陽光の動き1季節ごとの太陽光の動き1

反射光の行き先は、入射角(光が入ってくる角度)とそれを反射する物体の角度で変わります。
そして、近隣に迷惑をかけやすいのは設置角度が急な場合です。
具体的には、ガラス張りのビルを思い出してください。
垂直に設置された窓ガラスの反射光が地上に向いているためです。
しかし、太陽光パネルが垂直に並べられることは、ほとんどありません。

そこで、次の章では南中時でパネルの設置角度が30度だった場合と20度だった場合を例に考えてみましょう。

緯度が34度から35度近辺の岐阜県、三重県、愛知県、滋賀県の場合、季節ごとの南中高度は以下のようになります。

夏至:約78度 春分・秋分:約55度 冬至:約31度
※1:南中時とは、太陽が真南にある時刻をいいます。(お昼の12時とは限りません)
※2:南中高度とは、1日の太陽高度の中で最も大きな角度をいいます。太陽高度とは、太陽の位置からある地点の地平線に対する角度(仰角)です。
あなたのお住まいの地域の緯度を調べる際は、国土地理院のページに詳しく載っています。ご参考にしてください。

4-2-1. 夏至・春分・秋分・冬至の南中時の反射光の行き先 傾斜30度の場合

・夏至の南中時の反射光の行き先
南面に設置したパネルでは、南方向の上空へ42度の角度に進みます。
北面に設置したパネルでは、北方向の上空へ18度の角度に進みます。

・春分・秋分の南中時の反射光の行き先
南面に設置したパネルでは、南方向の上空へ65度の角度に進みます。
北面に設置したパネルでは、北方向の地上へ−5度の角度に進みます。
北面の場合、北隣の方から苦情がくるかもしれません。

・冬至の南中時の反射光の行き先
南面に設置したパネルでは、南方向の上空へ89度の角度に進みます。
北面に設置したパネルでは、北方向の地上へ−30度の角度に進みます。
北面の場合、北隣の方から苦情がくるかもしれません。
また、地上への反射は眩しさだけでなく、温度上昇も招きますのでおすすめできません。

4-2-2. 夏至・春分・秋分・冬至の南中時の反射光の行き先 傾斜20度の場合

・夏至の南中時の反射光の行き先
南面に設置したパネルでは、南方向の上空へ62度の角度に進みます。
北面に設置したパネルでは、北方向の上空へ38度の角度に進みます。

・春分・秋分の南中時の反射光の行き先
南面に設置したパネルでは、南方向の上空へ85度の角度に進みます。
北面に設置したパネルでは、北方向の上空へ15度の角度に進みます。

・冬至の南中時の反射光の行き先
南面に設置したパネルでは、北方向の上空へ109度の角度に進みます。
北面に設置したパネルでは、北方向の地上へ−9度の角度に進みます。
北面の場合、北隣の方から苦情がくるかもしれません。
また、地上への反射は眩しさだけでなく、温度上昇も招きますのでおすすめできません。

4-3. 北面の屋根に太陽光パネルを設置しない理由

季節ごとの太陽の動き方のおさらいと、反射光の行き先もお分かりいただけたでしょうか。
すでに北面に太陽光パネルを設置しない理由も、おわかりかもしれません。
念のために理由を確認しておきましょう。
太陽光パネルの北面設置がダメな理由
(1)発電効率が南面と比べて30-40%少ない。
(2)パネルへの入射角が小さくなるため、反射光が地上に向かうので問題になりやすい。(反射の法則)

というわけで、太陽光パネルは北面には設置しません。
(※雨勾配程度の緩やかな傾斜は設置しても大丈夫です)

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まとめ パネルの反射光トラブルを回避する3つの方法

パネルの反射光についての不安や疑問は少しでも晴れましたでしょうか?
もしもまだ不安でしたら、次の3つのことをお試しください。
どれもそんなにお金はかからないはずです。

(1)設置場所に鏡をもって立ってみる
鏡を太陽光パネルに見立てて、実際の設置角度と高さに合わせてみましょう。
太陽のある位置から覗いて、鏡に映っている場所が反射光があたるところになります。
(屋根上などは、危険なのでやめましょう。)

(2)反射光が計算できる設置業者に相談する


見積もりを頼む際に、反射光についても絶対に相談しましょう。客観的な根拠なく「だいじょうぶ」「だめです」などと答える業者は、信用してはいけません。
何故なら、問題があったときに訴えられるのは施主となるあなただからです。
さらに、設置後の故障や発電量の低下の際に相談しても客観的な裏付けのないまま対応されることになるでしょう。

(3)ご近所付き合いを大事にする(人間関係)
太陽光発電は、10年、20年と長期間にわたって設置しておくものです。それには、ご近所さんとの関係も大事になります。
受忍限度の内容を思い出してください。
主観的な部分もあるのであなたのことを悪く思っていたら、通常では気にならないようなことも悪くとらえてしまう場合があります。
また、「適法であれば何をしても構わない」という態度も禁物です。
理屈よりも感情で動くひともいるからです。
そうならないためにも、工事前、工事中、工事後の近隣挨拶や普段からの良好な関係づくりをおすすめします。
以上です。

最後になりますが、大事なことなのでもう一度。
反射光は計算で予測が可能です。必要以上に不安になる必要はありません。

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